三島由紀夫「奔馬」(新潮文庫)を読んだ。 「豊穣の海」4部作の第2部。1967年2月から1968年8月まで「新潮」に連載され、1969年2月に単行本として刊行された。 主人公の飯沼勲が神風連の行動に倣い仲間を組織してクーデターを企てるが、発覚し捕らえられる。その後の裁判で本多繁邦他の尽力により、結審後すぐに出獄。しかし今度は一人で財界のドンを刺殺し自刃するといったストーリー。もちろん前作の「春の雪」の続編であり、時代も前作から18年後に設定されており、主人公の飯沼勲は輪廻転生により松枝清顕の生まれ変わりであるといったように(それがわかっているのは狂言回し役の本多繁邦だけであるが)、連作としての連続性も確保されています。 物語の中心が「春の雪」の「恋」から「死への行動」に変わっても、核となっているのは無垢なる純粋性に対する強烈な希求でしょうか。単行本が続けて刊行されたように「春の雪」と「奔馬」はまさに裏表の作品なんですね。 自刃のシーンで有名な文末の「日輪は瞼の裏に赫奕と昇った」に至るまで三島文学の華麗なる文章を堪能しました。奔馬のごとく駆け抜けた短い生涯を、まさに美文の極地で表現しています。そして、さすがに古典たる風格を持っていますね。
by daisenhougen
| 2005-09-26 09:40
| 読書-詩歌小説評論他
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