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四方田犬彦「見ることの塩 パレスチナ・セルビア紀行」を読む

 四方田犬彦「見ることの塩 パレスチナ・セルビア紀行」(作品社)を読んだ。
 すばらしい本にめぐりあえました。去年刊行後すぐに買ってはあったのですが、なぜかパラパラめくるだけで積ん読状態でした。
 読んでみて驚愕です。昨年刊行された本の中では文句なしにベスト5に入りますね。もっと早く読むべきでした。
 著者が2004年に文化庁文化交流使としてイスラエルと旧ユーゴスラビアのセルビア・モンテネグロに派遣されたルポ。
 一般的な中東やヨーロッパの火薬庫の知識など吹き飛ばすような、深い内容を持った本です。単なるユダヤやアラブの対立なんて表面的な知識は何の役にも立たないのですね。
 複雑で重層的な対立や差別構造、そして憎しみと悲しみ。やりきれない現実が次々と描かれています。
 更には、戦争は平和、平和は戦争とシェークスピアばりに言ってみたくなりますね。四方田さんの軽いフットワークとものすごい博学さと情報収集力、そして本質を見極める洞察力によるすぐれたルポルタージュですね。

by daisenhougen | 2006-02-05 14:14 | 読書-詩歌小説評論他
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