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映画「うつせみ」見る

映画「うつせみ」見る_d0001004_9304869.jpg 昨日(3月26日)「恵比寿ガーデンシネマ」で映画「うつせみ」見た。
 2004年。韓国。監督:キム・ギドク。出演:イ・スンヨン、ジェヒ、クォン・ヒョゴ、チュ・ジンモ。
 キム・ギドク監督はまたもや素晴らしい作品を撮ってくれました。第61回ヴェネチア国際映画祭で監督賞をはじめ全4部門の受賞は当然ですね。
 韓国の原題は「空き家」、英語名は3-iron(3番アイアン)だそうです。映画を見終われば、日本名を含めてそれぞれに含蓄のある題名の付け方です。
 暴力夫によって自由を奪われていた人妻ソナと、留守宅に侵入し寛ぐという奇妙な生活をおくる青年テソクとの出会い、そしていっしょに逃避行して今度は二人でそんな奇妙な生活をおくるという、それこそ奇妙な設定です。更に、主人公の2人はほとんど言葉を発しないまま物語は進行します。
 これらの極めて特異な設定にもかかわらず、ぐんぐん物語に引き込まれてしまいます。作品に力があるんですね。
 静謐で、美しい映像に満ちた、極めて純粋な愛の物語です。エンディングで、二人が体重計にのると、目盛りがゼロを指しているシーンが象徴してるように愛の寓話ですね。バックで流れていた音楽も哀切で効果的でした。
 もちろんキム・ギドク監督ですから、単に幻想的な愛だけでなく、時折、静謐を破る現実的なシーンも挿入されており、常に、現実から遊離することはありません。
 映画の終盤で再び二人が再会し、ソナが「愛してる」と初めて言葉を発するのは、素晴らしい効果をあげていますね(ソナのセリフはこの一言だけですからね)。
 わずか1時間半程度の短い作品ですが、極めて多様な要素がぎっしりつまっています。濃厚な時間をたっぷり体験させてもらいました。
 キム・ギドク監督の作品はハリウッド的な作品の対極にありながら、ヨーロッパ的な純粋性や観念性にとらわれない作品を生み出していますね。ますます期待高まる監督です。次回作「弓」も秋には公開とのことですので、期待して待っていましょう。

by daisenhougen | 2006-03-27 09:29 | 鑑賞記-映画
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