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雑誌「短歌ヴァーサス9号」を拾い読み

雑誌「短歌ヴァーサス9号」を拾い読み_d0001004_6175944.jpg 雑誌「短歌ヴァーサス9号」を拾い読みした。
 特集1誌上歌集 早坂類『風の吹く日にベランダにいる』 、特集2短歌朗読の現在です。
 絶版で入所困難な早坂類の処女歌集「風の吹く日にベランダにいる」をまるごと掲載しています(太っ腹ですね)。これだけでもじゅうぶん元が取れますね。
 1993年に河出書房新社から刊行されたようです。義江邦夫「早坂類の「うさぎ穴」」、荻原裕幸「悲鳴の気配」の解説も付いています。
 著者の早坂類さんは1958年生まれで小説や詩などいろんなジャンルで活躍している女流歌人のようです。
 一読して惹かれてしまいました。なんて孤独なんでしょう。なんて透明なでしょう。死への願望を抱えた、今にも壊れてしまいそうな心象風景を繊細にすくい取った歌集ですね。今まで知らなかった不明が恥ずかしいですね。他の歌集も読みたくなってしまいました。
 何首か引用しておきます。

十八歳の聖橋から見たものを僕はどれだけ言えるだろうか
かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりひとりで歩く
その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった
閉ざされた体に黒く穿たれたのぞき穴から空を見ている
にじみ出る汗でこの世を汚します僕の海辺は真っ赤な海です
どんなにか遙かな場所から僕にくる風の吹く日にベランダにいる
死後に来る春にほのかに咲いているしずかななずなしずかななずな
草はらにひとりでいるよ死ねなくてスズシイ色の草にまぎれる

by daisenhougen | 2006-07-16 06:15 | 雑誌など
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