昨日(9月18日)「岩波ホール」で「紙屋悦子の青春」を見た。
2006年。日本。監督:黒木和雄。原作:松田正隆。出演:原田知世、永瀬正敏、松岡俊介、本上まなみ、小林薫。 黒田和雄監督(1930-2006)の作品は前作「父と暮らせば」に感銘をうけたので、この作品も期待して出かけました。今回も、観客の平均年齢はいささか高いですね。そしてほぼ満席でした。 黒田監督のライフワークである戦争を描いた作品で、監督の遺作です。 敗戦直前の鹿児島で兄夫婦(本上まなみ、小林薫)と紙屋悦子(原田知世)との3人の生活を淡々と丁寧に描いています。そして悦子と惹かれあいながら特攻志願した明石少尉(松岡俊介)が、親友(永瀬正敏)に託して見合いをさせるといったストーリーです。 そして、そのことにこだわりを持ち続けている、60年後の回想といった形で作られています。戦闘部分などは一切なく、どちらかと言えば食事のシーンが大半です。 以前見た映画「ホタル」は同じような題材を描きながら、戦後の生活を主体に描いていましたが、こちらの映画はあくまで「紙屋悦子の青春」の題名通り、敗戦直前の生活を描くことが中心となっています。 もちろん、戦争によって引き裂かれる悲劇といったテーマはあるようですが、この作品では、今ではかなり希薄となってしまった、相手のことを思いやり、礼儀正しく、つつましやかで質素な生活への憧れが中心となっているようです。黒木さんの晩年の心境の反映だったんでしょうか。 ただ、作品としてはちょっと華がないような気がしました。「父と暮らせば」では宮沢りえと原田芳雄の存在感は圧倒的でしたし、「ホタル」でも高倉健と田中裕子も同じでした。今回はかなり地味な展開の作品ですし、押さえた演技が中心であるからこそ、華のある役者がほしかったですね。チョット残念です。
by daisenhougen
| 2006-09-19 07:10
| 鑑賞記-映画
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