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塩野七生「ローマ世界の終焉―ローマ人の物語XV―」を読む

塩野七生「ローマ世界の終焉―ローマ人の物語XV―」を読む_d0001004_14405978.jpg 塩野七生「ローマ世界の終焉―ローマ人の物語XV―」を読んだ。
 新潮社、2006/12/15発行、A5判変型、444頁、3,150円。
 目次は次の通り。
 第一部 最後のローマ人(紀元三九五年―四一〇年)東西分離/ローマ人と蛮族/将軍スティリコ/後見人/“現場証人”/西ゴート族(ヴィジゴート)/アラリック/地中海が「内海」であった時代/アフリカ、反乱/農民から農奴へ/生産しない人々の増加/公共心の衰退/侵攻再開/イタリアへ/対決/ガリアを捨てる/凱旋式/ラヴェンナ遷都/襲い来る大波/迎撃/ローマ帝国の実戦力/フィエゾレの戦闘/ガリアの現実/毒をもって毒を制す/孤立/謀略/苦悩/死/空白/恐喝・その一/恐喝・その二/「ローマ劫掠」/ローマから去る人々、
 第二部 ローマ帝国の滅亡(紀元四一〇年―四七六年)覇権国の責務/進む蛮族化/「三分の一システム」/東ローマ帝国/女と権力/「軍司令官(マジステル・ミリトゥム)」たち/「軍司令官」ボニファティウス/ヴァンダル族/聖アウグスティヌス/「軍総司令官」アエティウス/瓦解/フン族/アッティラ/シャンパーニュの会戦/ヴェネツィア誕生/自壊/再び「ローマ劫掠」/最後の二十年/東西最後の共闘/ローマ帝国滅亡、
 第三部 「帝国以後」(紀元四七六年―)オドアケル/共生路線/ブリタニア・「帝国以後(ポスト・インペリウム)」/ガリア・「帝国以後」/ヒスパニア・「帝国以後」/北アフリカ・「帝国以後」/「パクス・バルバリカ」(蛮族による平和)/棲み分け/テオドリック/イタリア進攻/東ゴート(オストロゴート)王国/敗者の活用/忠臣カシオドロス/「東」の長い手/「パクス・バルバリカ」の終わり/学園(ヴィヴァリウム)/修道院/ユスティニアヌス大帝/『ローマ法大全』/聖戦思想/将軍ベリサリウス/アフリカ進攻/ヴァンダル王国壊滅/イタリア進攻/ゴート戦役/ローマ攻防/将軍ナルセス/ラヴェンナ落城/戦役再開/終戦/イタリアの死/ベリサリウスの死/ユスティニアヌスの死、
 だいぶ遅くなりましたが、最終巻をやっと読み終えました。第14巻は2006年読書始めによんだので、この15巻も2007年の読書始めに読むつもりでいたのですが、ぐずぐずしていたら3月になってしまいました。
 あわてて、海外出張の行き帰りの飛行機の中で読みました。ちょっと大部なので、機内に持ち込むのに迷いましたが、持ち込んで良かったです。飛行機の窮屈な長い時間も退屈せずに済みました。
 ローマ人の物語の第1巻の刊行は1992年ですから15年もかけての完結です。著者の塩野七生(1937年-)さんの持続力たるやすごいもんですね。
 私が第1巻を読んだのが1997年です。ここでその魅力にはまってしまい、その当時刊行されていた第6巻まで集中して読みました。カエサルを中心とした初期ローマの魅力に引きつけられてしまいましたね。このあたりは人類史の中での最大級のハイライトの一つですね。面白さに巻を置くあたわずといった思いが残ってます。
 ただ、それ以降の巻は、どちらかといえば淡々と続く散文的な長い長い歴史でした。さすがに一気に読むほどの魅力にある時代とはいえません。10年かけてゆっくり読むには適していたのかもしれませんね。
 そして、ついにこの巻で栄光のローマが滅びるところが描かれています。ひっそりと滅亡していくんですね。劇的でも何でもなく、無惨さと悲惨さだけが残ります。自分たちを守る力を失ったローマが蹂躙されている様が哀れですね。
 末尾を写しておきます。「盛者は必衰だが、「諸行」(res gestae)も無常であるからだろう。これが歴史の理ならば、後生のわれわれも、襟を正してそれを見送るのが、人々の営々たる努力のつみ重ねでもある歴史への、礼儀ではないだろうかと思っている」。

by daisenhougen | 2007-03-09 14:40 | 読書-詩歌小説評論他
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