茨木のり子「詩集 歳月」を読んだ。
花神社、2007年2月17日第1刷、1,995円、A5版、138頁。 昨年亡くなった茨木のり子(1926-2006)さんの遺稿詩集です。茨木さんといえば女性戦後詩人の代表みたいな人ですね。だいぶ昔になりますが現代詩文庫で代表作は読んだ記憶があります。 今回は1975年に夫を亡くしてから、その夫に宛てた39編の詩を収録したもので、生前は刊行しなかった作品たちのようです。詳しくは巻末に甥御さんが経緯を書いています。 収録作の題名を写しておきます。 五月/その時/夢/四面楚歌/最後の晩餐/お経/道づれ/月の光/栃餅/部分/夢で遊ぶ病/占領/泉/駅/蝉しぐれ/夜の庭/モーツアルト/殺し文句/恋歌/獣めく/一人のひと/二人のコック/町角/誤解/ひとり暮し/手/急がなくては/レインコート/梅酒/橇/なれる/電報/(存在)/(パンツ一枚で)/試すなかれ/椅子/古歌/湯檜曾/歳月。 茨木さんは50歳前に夫を亡くしてから79歳までをこういった詩を書きながら一人暮らしの孤独に耐えてきたんですね。茨木さんの詩心のコアがむき出しになっていますね。 作品をひとつ写しておきます。詩集の名前にもなった「歳月」です。七十九歳で一人孤独に亡くなった茨木さんのことを思うと、なんとも哀切な詩ですね。 真実を見きわめるのに 二十五年という歳月は短かったでしょうか 九十歳のあなたを想定してみる 八十歳のわたしを想定してみる どちらかがぼけて どちらかが疲れはて あるいは二人ともそうなって わけもわからず憎みあっている姿が ちらっとよぎる あるいはまた ふんわりとした翁と媼になって もう行きましょう と 互いに首を締めようとして その力さえなく尻餅なんかついている姿 だけど 歳月だけではないでしょう たった一日っきりの 稲妻のような真実を 抱きしめて生き抜いている人もいますもの
by daisenhougen
| 2007-04-17 06:51
| 読書-詩歌小説評論他
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