四方田犬彦「先生とわたし」を読んだ。
新潮社、2007年6月発行、1,575円、四六判、238頁。 目次を写しておきます。プロローグ、第1章 メフィストフェレス、第2章 ファウスト、第3章 出自と残滓、第4章 ヨブ、間奏曲、第5章 ウェルギリウス、エピローグ。 「新潮」に一括掲載されたものの単行本化のようです。 四方田さんの著作としては東京教育大附属駒場高校時代を描いた「ハイスクール1968」の続編のようなもんですね。 東京大学文学部に入学し、英文学者・由良君美のゼミに入り、その後師弟関係を結び、大きな影響を受けたが、やがて関係を絶つに至る経緯が延々と描かれています。 その対象の由良君美さんという存在は、当時から名前は知っていたが、まともには読んだことがありませんでした。たしかに、その当時は澁澤龍彦さんなんかといっしょに、ハイブローな雑誌ではよく見かけた存在でしたね。でも、当時はわたしの関心領域外でした(今もですが)。 一読して、まず感じたことは、なんといってもその知的水準のレベルの高さですね。附属高校時代の読書遍歴にも驚きましたが、東京大学に入ってからはこんな風に学び、本を読んでいたんですね。わたくしなんぞの貧弱な大学経験や読書体験とはまったくレベルが違ってました。世の秀才が集まった東京大学って凄いんですね。でも、東大出身者による東大の自慢話にも見えなくもありませんがね・・・。 でも、この本の一番の核心部分、由良が四方田を殴った理由を、師匠(由良)が弟子(四方田)の才能に嫉妬したからだとしていることには、かなり違和感を感じました。 これではたんなる痴話げんかですよね。延々と一書をものにする内容ではありませんよ。 そういった目で見ると、知的優越性の自慢話と、学者同士の嫉妬話といった極めて低俗読み物に見えてきました。 四方田さんはこういった低俗痴話話を書いてる暇あるんだったら、「見ることの塩」や「パレスチナ・ナウ」のような世界各地で起こっていることを、深くえぐり出す仕事をもっとしっかりやってほしいですね。
by daisenhougen
| 2007-07-07 06:39
| 読書-詩歌小説評論他
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