雨宮昭一「占領と改革(シリーズ 日本近現代史7)」を読んだ。
岩波書店(岩波新書)、2008年1月22日第1刷、735円、新書判、220頁。 目次は次の通り。はじめに、第1章 戦後国際体制の形成と日本の敗戦(総力戦体制と敗戦、戦後国際体制の形成、敗戦への道)、第2章 非軍事化と民主化(占領体制の形成、占領改革の実施、東京裁判と戦争責任、民主化政策の諸相)、第3章 新憲法の形成へ(憲法改正をめぐって、アメリカ政府とGHQ、GHQの憲法草案、国内の諸憲法案と憲法体制の成立)、第4章 政党勢力と大衆運動(敗戦と日本の指導者たち、敗戦前後の政党再編、GHQと公職追放、自由主義派と協同主義派)、第5章 中道内閣の展開と自由主義派の結集(片山連立内閣の時代、芦田中道内閣の成立、冷戦と占領政策の転換、ドッジ・ラインと社会の再編)、第6章 戦後体制の形成(諸勢力の体制構想、一九五〇年代の日本社会)、おわりに、あとがき、参考文献/略年表/索引。 著者の雨宮昭一(1944-)さんは政治学、日本政治外交史専攻の獨協大学教授とのことです。 著者の主張は明確です。アメリカによる日本占領と民主化の成功が、その後のアメリカの行動を決定づけている。その成功体験がいまだにアメリカの独善的な占領政策や民主化政策の押しつけの根っこにある。しかし日本の戦後民主化やその他の改革はアメリカの占領がなくても行われたのではないかといったところのようです。 もちろん戦後改革や民主化の芽がその当時存在したことは当然であり、今までの一方的な占領礼賛は是正されるべきです。その点はいくら強調しても良いと思われます。 ただ、その当時のアメリカの行った理想主義的な占領政策なしに、日本が独自にあれだけのラジカルな改革は実行できなかったのも確かではないでしょうか。 現在のアメリカが行っている独善的な政策と、日本占領当時の政策を一直線に並べて評価するのは歴史家としてフェアーじゃない気がします。歴史の多義性や両面性をキチンと記述すべきでしょうね。 もちろん、著者が言うように、五〇年代は一〇人中八、九人が家族や近所の人々に見守られて自宅で生まれ自宅で死を迎える社会であり、近所の職人や商店との日常的な付き合いが見られる地域社会が存在し、基本的人権が保障された民主主義の制度があり、国家や資本から自立した多様な空間=コミュニティーが存在する社会であったのかもしれません。 この時代を再評価することは、加速度的に一元化しバーチャル化しつつある現在に対する一つのヒントを与えてくれることなのかもしれません。 そうであるからこそ、光と陰をきちんと描くことが求められると思います。
by daisenhougen
| 2008-02-02 06:40
| 読書-詩歌小説評論他
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