芝健介「ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」を読む

d0001004_17343421.jpg 芝健介「ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」を読んだ。
 ナチスのユダヤ人大量虐殺の全貌をコンパクトにまとめた著作です。
 ホロコーストといえばヒトラーの狂信的なユダヤ人嫌いがエスカレートした結果、アウシュヴィッツ絶滅収容所で多くのユダヤ人が虐殺されたといった知識ぐらいしか持ってませんでした。
 この著作ではユダヤ人の財産収奪から始まり、段々エスカレートして行き、追放政策、隔離政策、大量射殺、ついにはガス室を使った殺人工場による大量殺戮までを政策決定過程まで踏み込んで描いています。
 この虐殺に至るにはヒトラーの意図は重要であるが、成果を競うドイツ官僚組織が大きな役割を果たしており、更にはドイツ人そのものの暗黙の了解があったとしています。
 そして大量殺戮が行われたのはアウシュビッツだけでなく、多くの収容所の存在も明らかにしています。
 それにしてもこの大量虐殺の規模の大きさには言葉も出ません。
 大戦前に全ヨーロッパのユダヤ人の人口が950万人であり、大戦終了後は310万人にまで減っており、他の地区への亡命者60万人を引いても580万人は虐殺されたことになるそうです。
 著者の推計では大量射殺が130万人、ガス室での殺戮300万人などで600万人以上としています。 また、国別ではポーランド人が300万人、ソ連人が100万人でドイツ人は16万人にすぎないとのことです。このあたりも驚きです。
 ドイツ人がなぜこれほどの虐殺を明示あるいは暗黙であっても支持したのか、ユダヤ人は何故これほどの虐殺に大規模な抵抗なしに受け入れたのか等々謎はいっぱい残りました。
 いずれにせよページをめくるのが苦痛となるような辛い読書でした。
 でもこれが現実なのですから、眼をそむけることなく、しっかり直視しなければなりませんね。
 同じ時期、日本人は南京大虐殺を行ってますし、その後も中国人によるチベット人大虐殺、ポルポト政権の大虐殺、ルワンダ大虐殺とけっしてこの流れは止まっていません。

 中央公論新社(中公新書)、2008年04月25発行、903円、新書版、282頁。
 目次:序章 反ユダヤ主義の背景―宗教から「人種」へ、第1章 ヒトラー政権と迫害の開始―「追放」の模索、第2章 ポーランド侵攻―追放から隔離へ、第3章 「ゲットー化」政策―集住・隔離の限界、第4章 ソ連侵攻と行動部隊―大量射殺、第5章 「最終解決」の帰結―絶滅収容所への道、第6章 絶滅収容所―ガスによる計画的大量殺戮、終章 ホロコーストと歴史学。
 著者の芝健介 (1947-)さんは国際関係論専攻で東京女子大学教授とのことです。

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by daisenhougen | 2008-05-20 07:34 | 読書-詩歌小説評論他
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