石原吉郎「北鎌倉」を読む

d0001004_1221393.jpg 石原吉郎「北鎌倉」を読んだ。
 30年も前の本ですが、ネットの古本店で簡単に入手できました。価格も定価と同じですからラッキーでした。
 石原吉郎(1915-1977)さんは戦後詩人の中でも傑出した存在です。わたしも一時熱心に読んだ記憶があります。多分ほとんどの評論集と詩集は読んだと思います(だいぶ昔ですがね)。
 ただその当時、歌集は読んでいませんでした。だいぶ後になってから岡井隆さんが絶賛してるのも読んだりしたこともあって、心残りでいたました。
 今回、たまたまネットで見つけたので買ってしまいました。
 帯によると遺稿歌集であり「歌は1976年夏、ふいに生まれ始めた。歌は読者に不安を抱かせるような危険な表現を持っていた。そして1977年秋、突然に終った――本書は石原吉郎の死の直前に編集され校定された唯一の歌集となった」とのことです。99首が収録されていました。
 石原さんの詩と同じように、極めて象徴的な作風です。
 どんな表現手法でも石原さんは石原さんですね。
 決してぶれない確固たる表現となってます。
 30年遅れですが、良い本に巡り会えました。

 何首か写しておきます。
 今生の水面を垂りて相逢わず他界を逆向きて立つ
 この掌はも検証受くる手にあらずと言うよりはやく指はかぞへらる
 石膏のごとくあらずばこの地上になんじの位置はつひにあらざる
 媒介とことしもなげに言いはなつ間を奔る火のあるを知れ
 かまくらの北の大路の夕づく陽酒盡く頃ゆひた沈みけり
 鎌倉の鎌倉なりし日の果てを蹌踉と歩ます酢のままの脚
 鎌倉の北の大路を往く果てを直に白刃の立つをば見たり
 わが佇つは双基立てる樹のごとき墓碑の剛穀の間とぞ知れ
 夕暮れの暮れの絶え間をひとしきり 夕べは朝を耐えかねてみよ

 久しぶりに石原さんの詩も読み直してみたくなりました。

 花神社、1978年3月10日初版第1刷、1,500円、A5版、79頁。
 目次:今生の・・・・・・、病中詠、鍔鳴り、飲食、切出し、創傷、塩、北鎌倉、発念抄、すべては遠し、生き霊、夕暮れの・・・・・・・。

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by daisenhougen | 2008-05-29 07:00 | 読書-詩歌小説評論他
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