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中沢新一「古代から来た未来人 折口信夫」を読む

中沢新一「古代から来た未来人 折口信夫」を読む_d0001004_1439551.jpg 中沢新一「古代から来た未来人 折口信夫」を読んだ。
 2006年11月に放送された「NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」というシリーズの「折口信夫 古代から来た未来人/中沢新一」をもとに(その時の感想はこちら)、折口信夫全集の月報に書いたものと書き下ろしを加えたとのことです。
 もちろん中沢さんですから、人物伝といっても単に折口信夫の思想を紹介するといったものではありません。
 折口信夫を論じる振りをして、持論を展開するといったいつものスタイルです。対称性理論や三位一体モデルといった中沢ワールドの開陳になってました。
 できればもうちょっと謙虚に折口信夫さんの理論を素直にたどって、紹介するスタイルであって欲しかったです。
 中沢さんが非常に持ち上げていた折口さんの「ムスビ」の神といったところも、キチンと折口さんの思想として紹介してもらわないと、どこまでが折口理論でどっからが中沢理論なのかがわからなくなり、全てが中沢理論に取り込まれているように見えてしまいます。
 どうしても折口さんの思想から中沢さんに都合の良い部分だけをつまみ食いした印象ばかりが強い著作でした(最近の中沢さんはみんなそんな感じですね)。
 折口さんを紹介する本なんでしょうから、もっと謙虚に、そして自己主張は最小限度にして欲しかったですね。

 筑摩書房(ちくまプリマー新書)、2008年05月10日初版第1刷、735円、新書版、144頁。
 目次:序文 奇跡のような学問、第1章 「古代人」の心を知る、第2章 「まれびと」の発見、第3章 芸能史という宝物庫、第4章 未来で待つ人、第5章 大いなる転回、第6章 心の未来のための設計図。

by daisenhougen | 2008-05-29 07:04 | 読書-詩歌小説評論他
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