福田和也「教養としての歴史 日本の近代(上)」を読んだ。
福田和也さんの著作を読むのははじめてです。雑誌などでたまに目にすると、ちょっと極端な言動から触手が動きませんでした。江藤淳さんの推奨で世に出たことから保守的な評論家といったイメージでした。 今回、偶然読んでみました。 内容的には極めてまっとうでした。保守的歴史観によく見られる戦前礼賛でもありませんし、バランス良く日本の近代をまとめていました。 後書きにある「日本は明治維新から大正の終わりにいたる六十年間で、国民が自助努力によって自分なりの希望を果たすことのできる、世界水準の国家を作り上げました。それが、日本における近代であったといえるでしょう」が内容を要約してくれてます。 ヨーロッパ世界の近代化の中で、日本の近代化がどのように行われたかをザックリと見通す上では参考になる著作でした。 ただ、気になったのが、歴史をあくまで上から見下ろした視点で描かれていることです。近代化にともなう軋轢や苦しみには、善なる近代化の大きな動きからは取るに足らないといったような書き方に思えます 歴史学者の書いた本だったらまだしも、文学者を名乗る人がこういった本ではいけません。著者が目指した「物語」にはなってませんよ・・・。 新潮社(新潮新書)、2008年04月20日発行、735円、新書版、223頁。 著者の福田和也(1960-)さんは仏文学者で慶応大学教授。評論家としての著作も多いですね。 目次:第1章 近代を前に、江戸は運動神経を研ぎ澄ましていた、第2章 近代国家へのスタートダッシュが成功したわけ、第3章 なぜ、憲法は必要だったのか、第4章 独立を維持するための戦争だった日清・日露、第5章 「義」の時代から「利」の時代へ、第6章 第一次世界大戦は天佑だったのか、終章 日本にとっての近代とは。
by daisenhougen
| 2008-06-13 07:16
| 読書-詩歌小説評論他
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