「エミリー・ウングワレー展」を見る

d0001004_14531516.jpg 昨日(07月12日)「国立新美術館」で展覧会「エミリー・ウングワレー展」を見た。
 エミリー・ウングワレー(1910頃-1996)の作品は多分、2006年に「ブリヂストン美術館」で開催された「プリズム:オーストラリア現代美術展展」で拝見しているはずですが、まったく記憶に残っておりません。
 まぁ、そういったことですから、今回が初対面みたいなものです。
 彼女は「オーストラリア中央の砂漠地帯で、アボリジニの伝統的な生活を送りながら、儀礼のためのボディ・ペインティングや砂絵を描いていたが、1977年からバティック(ろうけつ染め)の制作をはじめ、88年からはカンヴァス画を描きはじめる。その後亡くなるまでのわずか8年の間に3千点とも4千点ともいわれる作品を残した」と説明されています。

d0001004_14532742.jpg そして彼女を「アボリジニを代表する画家であると同時に、20世紀が生んだもっとも偉大な抽象画家の一人」と紹介しています
 でも、まったくピントはずれの紹介としか思えません。
 展示はまず最初に「イントロダクション」として、現代的な抽象画の見間違うばかりの大作でお出迎えです。
 この部分を見た時点では、わたしも展示してあるウングワレー作品を抽象絵画としてとらえており、線と色彩をどのように感ずればいいのかを考えながら作品に対していました。
 でも、その後にほぼ年代順に「原点」、「点描」、「身体に描かれた線」、「色彩主義」、「ヤムイモ」、「神聖な草」、「ラスト・シリーズ」といった区分で多くの作品が続いているのを見ていると、これらは決して西洋絵画史的な抽象絵画ではないことに気づきます。

d0001004_14533576.jpg 更に「ユートピア・ルーム」といったコーナーで、彼女の造形作や体に施した刺青の写真を見ると、彼女はアポリジニ人が儀礼の時に身体に施す刺青などのボディ・ペインティングや砂絵などを、征服した西洋人から与えられた絵筆と絵の具を使ってキャンバスに置き換えただけなのがわかります。
 彼女はけっして抽象絵画を創作しているわけではないんではありません。いや作品ですらないのかもしれません。
 征服と近代化によって徹底的に破壊させられたアボリジニ文化の心象世界が、彼女を通して奇跡的に写し取られたものなのです。
 この圧倒的に目に飛び込んでくる色彩と線のかたまりは、人間の根源的な心象世界がダイレクトに写し取られた希有な例なのかもしれません。
 おそらく彼女の後の世代では、その心象世界はさらに徹底的に破壊されてしまい、アボリジニ人の末裔であっても、こんな形であっても再現することなど不可能になっているとと思われます。
 図録買ったので、読んでから感想続けます。

[PR]
by daisenhougen | 2008-07-13 07:20 | 鑑賞記-展覧会
<< 「ウィーン美術史美術館所蔵 静... 「モスクワ市近代美術館所蔵 青... >>