湯浅邦弘「諸子百家」を読んだ。
1990年以降、中国において多くの古代文献等の歴史的発見が続き、いわゆる諸子百家についても大きく見直しははかられているようです。 「諸子百家と出土文献。この両者は密接な関係にあり、もはや出土文献を抜きにして諸子百家を語れない時代を迎えているのである」とのことです。 このあたりの一端は先日読んだ岩波文庫版の「老子」の注釈本にも触れられていました(その時の感想はこちら)。 この著作では冒頭部分で、これらの文献発見のあらましが概説されていました。興味深い内容でした。 その後が、この本の中心部分である春秋時代や戦国時代に登場した多彩な中国古代思想を解説した部分です。 最も代表的な孔子、孟子、墨家、道家、法家、孫子についてコンパクトに解説してくれています。 この時代の思想についての入門書としては充分な内容でした。 多様な思想が展開した様が生き生きと伝えてくれています。 けっこう教わることも多くありました。 今まで敬遠していた「韓非子」あたりを読んでみようかなぁ、なんて思わされただけでも収穫でした。 西洋においてはギリシャ思想、東洋においてはこの諸子百家の思想が人類の思想の源泉であることが、あらためて思い知らされました。 ただ、最終章の中国紀行は「蛇足」以外の何ものでもありませんでした。 こんな紀行文で締めくくったことで、まさしく「竜頭蛇尾」の著作となってしまってます。こんな無駄話でページを費やすなら、古代文献によって明らかになった諸子百家の新たな像をもっと深く掘り下げてjほしかったですね。 著者の湯浅邦弘(1957年-)さんは中国文学が専門の大阪大学教授とのことです。 目次:序章 新出土文献の発見と諸子百家、第1章 諸子百家前史―新出土文献の語るもの、第2章 君子とは誰か―孔子の思想、第3章 人間への信頼―孟子の思想、第4章 特異な愛のかたち―墨家の思想、第5章 世界の真実を求めて―道家の思想、第6章 政治の本質とは何か―法家の思想、第7章 戦わずして勝つ―孫子の思想、終章 諸子百家の旅。 中央公論新社(中公新書)、2009年03月25日発行、882円、新書版、302頁。
by daisenhougen
| 2009-04-07 07:52
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