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「図録 石踊達哉展」を読む

d0001004_19214336.jpg 「図録 石踊達哉展」(渋谷区立松濤美術館・南日本新聞社)を読んだ。
 高橋睦郎「青海波讃」という短いエッセーが載っています。「青海波は静海波とも書き、その繰り返しから成る、荒海は静穏そのこのだが、その底にある激情は世界さえ呑み込みかねない。思うに、石踊達哉さんの「青海波」も」といった熱烈なオマージュですね。
 後は図版と、石踊さん本人のチョットした文章、経歴といった体裁です。展示数も30点ぐらいなので薄い図録集です。
 日本画家は晩年が大切ですからね。これから大きく化けてくれることを期待したいですね。琳派ブームに乗った、単なる意匠家で終わってほしくないですね。

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by daisenhougen | 2006-09-30 06:20 | 読書-展覧会図録

粟屋憲太郎 「東京裁判への道」(上)(下)を読む

 粟屋憲太郎 「東京裁判への道」(上)(下)(講談社選書メチエ)を読んだ。
 最近話題になっているA級戦犯について知りたいと思って読んでみました。
 まず、目次を写しておきます。序章 東京裁判資料を追って、第1章 日本敗戦と戦争犯罪問題、第2章 国際検察局の設立、第3章 近衛文麿の自殺とその波紋、第4章 木戸幸一の大弁明、第5章 昭和天皇の戦争責任問題、第6章 陸軍の「怪物」による内部告発、序章 日本側の自主裁判構想、第7章 起訴状の提出、第8章 A級戦犯容疑者の釈放、第9章 細菌戦、毒ガス戦の免責、第10章 訴追と免責の岐路、むすび そして開廷へ。
 著者の粟屋憲太郎(1944-)さんは日本近現代史専攻の学者さんで、立教大学文学部教授とのことです。はじめて読む人です。
 「朝日ジャーナル」に1984.10.12~1985.4.12に連載したものの出版とのことです(懐かしい雑誌ですね、でも歴史学ってこんなに悠長なんですかね)。
 アメリカに残されているA級戦犯(及び容疑者)に対する検察側の膨大な調書によって、東京裁判の訴追に至る経緯を描いた著作です。
 A級戦犯として訴追されることが、アメリカの占領政策及び国際情勢に大きく影響された様子がよくわかりますね。様々に揺れ動いた基準や情勢の変化、圧力等によって訴追が決まっていったんですね。そういう意味では公平さからはほど遠かったのが良くわかりますね。「運」といったものを考えざる得ませんね。
 マッカーサーが国際裁判所ではなく真珠湾奇襲の罪で米国の裁判で裁くことに固執したなんて話も、現在でも日本人に対してアメリカ人の抱いている感情なのかもしれませんね。 また、笹川良一をはじめとして、戦犯を逃れるために卑屈に振る舞い、弁明した様子も調書を基にけっこう詳しく描かれていました。
 ただ、大部の著作で、しかも題名通り訴追までの期間しか描かれておらず、東京裁判全体を論じてはいないにもかかわらず、論点がちょっと散漫で、尚かつきっちり突っ込んだ論述がされていない印象でした。例えば天皇不起訴についても、なんら新たな視点が見いだせませんでした。
 さらには、断片的な著者の人物評価があんまり実証的でもない形で散見されているのも感心しませんでした。
 「膨大なアメリカに残された検察調書を調べましたんで、みなさんに興味を引きそうな部分を抜き出して紹介します」といった本ですね。きっちりした東京裁判論を期待すると思いっきり裏切られちゃいますね。

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by daisenhougen | 2006-09-29 05:56 | 読書-詩歌小説評論他

朽木ゆり子「フェルメール全点踏破の旅」を読む

 朽木ゆり子「フェルメール全点踏破の旅」(集英社新書)を読んだ。
 作者の朽木ゆり子さんはジャーナリストでフェルメールの関する著作も何点か出版しているようですが、小生にははじめて読む著者です。
 出版社の企画でフェルメールの全作品37点を訪ねる企画本です。2004年12月から2005年1月にかけてでベルリン、ドレスデン、ブラウンシュバイク、ウィーン、デルフト、アムステルダム、ハーグ、ロッテルダム、ロンドン、パリ、エジンバラ、ワシントン、フィラデルフィア、ニューヨークとまわった記録ですね。
 結果としては4点は見ることができなかったようですね。行方不明の「合奏」はともかく他はねぇ。チョット看板倒れですね。個人が個人のお金で見て回ったならともかく、出版社のお金でコーディネータ付きですからね。ちょっと手抜き出版の感じですね。
 まず、フェルメール論あるいは作品論としては、とりたてて深い考察は感じられません。朽木さんの私的感想が断片的に述べられているだけですね。この程度の人が何冊もフェルメールについての本を書いてるのは、ちょっと驚きです。
 又、フェルメールの作品を実際に訪ねようとする人へのガイドにもなっていません。どうせなら、もっと徹底的に実際に訪ねるための実用旅行ガイドとして書いて貰った方がすっきりしますね。
 開館時間はどうなっているのか、閉館日はどうなっているの、電話問い合わせの対応は、英語での問い合わせはできるのか、アクセスは、館内の見取り図等々いっぱい知りたいことありますよ(出版社が全部段取りしてくれて、そんなこと心配無用だったんでしょうかね・・・)。
 大体、きっちりしたリストも掲載されていませんね。チョット中途半端な作りの本でした。
 でも、フェルメールの全作品を小さいながらもカラー図版で気軽に眺められただけでも良しとしましょう。
 1662~1665年に描かれた「真珠の首飾り」「窓辺で水差しを持つ女」「青衣の女」「天秤を持つ女」がフェルメールの最高傑作と言われてると書かれていたので、以前読んだ尾崎彰宏「フェルメール(西洋絵画の巨匠5)」を引っぱり出して、大きい図版で確認してみました。ますますフェルメールに惹かれますね。来年あたりに日本展示の企画はないんでしょうかね。

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by daisenhougen | 2006-09-28 06:48 | 読書-詩歌小説評論他

岩井克人・三浦雅士「資本主義から市民主義へ」を読む

 岩井克人・三浦雅士「資本主義から市民主義へ」(新書館)を読んだ。
 目次を写しておきます。第1章 貨幣論、第2章 資本主義論、第3章 法人論、第4章 信任論、第5章 市民社会論、第6章 人間論。
 岩井克人(1947-)さんの今までの著作を要約して語った本ですね。岩井さんの著作はデビュー作の専門書以外は全部読んできています。このブログでも「会社はだれのものか」の感想アップしています。対談形式なので、気楽な気持ちで復習として読んでみました。
 対談相手の三浦雅士(1946-)さんは編集者から文芸評論家へ転身した人ですね。
 「貨幣は貨幣であるがゆえに貨幣である。貨幣を根拠づけるものはただ貨幣だけ。」といった論法で法も言語も論じるいつもの岩井理論ですね。経済理論を幅広い視野から論ずるところは説得力を感じますし、だからこそずーっと追っかけてきました。
 でも、結局は幻想論のパクリじゃないのと思ってしまいますね。そしてその幻想論を実体論として強弁してしまうところに、この人に限界が感じられますね。いや決定的な誤りと思いますね。
 そしてその後の、市民社会論あたりからは全くダメですね。人間の持つ幻想(観念)を実体として捉えることから、経済理論から離れれば離れるほど、おかしな錯誤に満ちた袋小路に入ってしまってますね。貨幣論では何となく説得力があると思われた理論が全くダメなことがハッキリしてしまいますね。
 やっぱり経済学者止まりの人が、無理に普遍化した理論を振り回すとろくなことないですね。

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by daisenhougen | 2006-09-27 21:43 | 読書-詩歌小説評論他

マジックキューブを買う

d0001004_13404222.jpg マジックキューブSalvadol Dali Magic Cubeを買った。「ダリ回顧展」の記念に買いました。
 6面にそれぞれダリの作品が印刷されていますが、開いてゆくと更に3面の絵画が見られるといったたわいもない作りです。
 売店ではラッピングされていて、どんなものか解らずに買いました。値段も1,050円と手軽だし、ルービックキューブみたいなものを想像して買ったのですが、見事にはずしてしまいましたね。
 まあ、ダリ展の記念ですから、机の上の飾りにはなりますね。

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by daisenhougen | 2006-09-26 05:39 | オモチャ等々

「HASHI(橋村奉臣)展」を見る

d0001004_16572555.jpgd0001004_16573757.jpg 昨日(9月24日)「東京都写真美術館」で「HASHI(橋村奉臣)展 一瞬の永遠&未来の原風景」を見た。
 「ニューヨーク在住の写真家・橋村奉臣は、アメリカで「HASHI」の名で呼ばれ、その驚異的な技法で、アメリカの広告写真界において不動の地位を築き上げました。HASHI(橋村奉臣)展「一瞬の永遠」&「未来の原風景」では、2部構成で橋村の今日までの軌跡、ならびに今後の新たな方向性をご紹介いたします」とのことです。
 橋村奉臣(1945-)さんの作品も意識して見るのは初めてです。
 最初の「一瞬の永遠」は水、ワインなどの液体やガラスなどを被写体を超高速シャッターで瞬間を切り取った作品です。広告写真界で話題をさらったのもうなずけますね。広告写真や部屋のインテリアには最適ですね。
 多分、何度か目にする機会はあったでしょうね。ただ、広告写真として見ていて、写真家、橋村奉臣さんとは意識してませんでした。こんな風にまとめて見ると、この洗練された美しさは感嘆してしまいます。素晴らしいもんです。
 次の「未来の原風景」は橋村のオリジナル「HASHIGRAPHY」の作品で、写真と絵画を融合させた作風の中に、「今から千年後、西暦3000年の未来社会で生活する人々の目に、現代がどう見えるか」ということらしいです。
 でも、こちらはあんまり面白い試みとは思えませんでした。単に写真を古ぼけさせただけジャンといった気がしました。
 でも、「一瞬の永遠」の世界だけで安住しないで、表現の枠を広げようとしているのは大したもんですね。感心します。ただ、ちょっと広げる方向が間違っている気もします。立松和平さんあたりの悪い影響でなければ良いんですがね。
 やっぱり橋村さんには「一瞬の永遠」の洗練された世界の進化形を見たいですね。驚く世界の出現を待ちましょう。

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by daisenhougen | 2006-09-25 06:56 | 鑑賞記-展覧会

「石内都:mother's展」を見る

d0001004_1655798.jpgd0001004_16551811.jpg 昨日(9月24日)「東京都写真美術館」で「石内都:mother's展」を見た。
 第51回ヴェネチア・ビエンナーレ2005の日本館代表となった石内都(1947-)さんの「mother's」シリーズの凱旋展示とのことです。
 2つの美術品を鑑賞しているとは思えない超混雑している会場から一転して、こちらは静かな環境でした。心おきなくゆっくり過ごすことができました。時間が止まっているような気分でした。
 石内さんの写真は多分、初めて拝見します。ちょっと小生の好みの領域ではないような気がしながら見始めました。
 でも、行ったり来たりしながら、見ていると、だんだん彼女の世界に入り込んでいきました。母親の遺品数々を鮮やかに切り取り、生身のようにリアルに写し取っています。女の臭いがつまっていますね。遺品を骨董的なとらえ方でなく、あくまで生々しい対象として捉えています。過去と現在が併存している感覚ですね。
 小生みたいな、こういった女独特の世界にはあんまり関心もなく、いってみれば無縁の人間を引き込むんですから、かなり力のある写真家のような気がしますね。一つ世界が広がりました。

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by daisenhougen | 2006-09-25 06:54 | 鑑賞記-展覧会

「驚異の地下帝国 始皇帝と兵馬俑展」を見る

d0001004_15503471.jpg 昨日(9月24日)「江戸東京博物館」で「驚異の地下帝国 始皇帝と彩色兵馬俑展~司馬遷『史記』の世界~」を見た。
 「本展は、『史記』を背景に、最新の文物資料を展覧して文献史学と考古学の接点を探り、新たな歴史像を示そうとするものです。春秋・戦国時代から、司馬遷が生き執筆した前漢・武帝時代までの約700年間(BC770~BC87年)に焦点をあて、『史記』との接点となる各時代を代表する彫塑(ちょうそ)、装飾品、武具、生活用品、建築遺物など、日本初公開を多数含む120件の厳選された文物資料を多角的に紹介します」とのことです。
 混んでいる展覧会の連チャンとなっていました。何でこんなに混んでるんでしょうね。こちらもゆっくり鑑賞する環境ではなかったですね。
 展示の目玉は「彩色跪射俑(さいしききしゃよう)」 です。これまで土色の世界と思われていた秦始皇帝の兵馬俑は、実は極彩色の彩色が施されているということで、今回日本とドイツで世界同時初公開だそうです。でも1体だけの展示です。
 兵馬俑は今までも何度か見る機会がありました、最近では2004年に「上野の森美術館」で「大兵馬俑展」を見て以来ですね。
 今回も、展示数は少ないですが、この迫力はたいしたもんですね。
 映像が放映されていましたが、一度は現地に行って、大量に並んでいる様を見てみたいもんですね。
 展示では、それ以降も漢の武帝の時代までの埋葬物を展示してありましたが(どちらかと言えばそっちの展示数の方が多いんですが)、秦の時代の兵馬俑の迫力には及びませんね。
 図録買いましたので、読んでから感想続けます。

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by daisenhougen | 2006-09-25 06:50 | 鑑賞記-展覧会

「生誕100年記念 ダリ回顧展」を見る

d0001004_1543598.jpgd0001004_154316100.jpg 昨日(9月24日)「上野の森美術館」で「生誕100年記念 ダリ回顧展」を見た。
 「本展は、スペイン・ガラ=サルバドール・ダリ財団と、アメリカ・サルバドール・ダリ美術館からそれぞれ、日本初公開の作品を含む主要な油彩画約60点を中心に、貴重な初期のドローイングや写真なども展示し、1989年に84歳で生涯を閉じるまでの巨匠ダリ(1904-89)の足跡をたどる大回顧展となります」とのことです。
 小生、ダリは好きな画家の一人です。日本におけるダリ美術館とも言うべき「諸橋近代美術館」も二度ほど訪れたことがありますし、「横浜美術館」にもけっこう作品が展示してありますね。最近では「西洋絵画の巨匠3 ダリ」なんて本も読んだばかりです。
 と言うことで、期待して訪れました。
 10時過ぎに到着したら、入り口はほとんど並んでいる人もいなかったので、ちょっと拍子抜けしました。あれだけコマーシャルやってるのに、と思ったのもつかの間、会場内はぎゅーぎゅー詰めでした。それでなくとも狭い会場なので、落ち着いて見る環境ではありませんでした。でも、頑張って何とか一回りしました。
 まず最初は、初期の作品が並んでいました。いろんな手法での作品がありますね。貴重な展示ですね。
 その後、シュールリアリズムのおなじみの作品が並んでいました。歪んだ時計やガラ夫人などおなじみのシーンが散りばめられた作品の数々ですね。
 どの作品もいろんな暗示や意味づけがあるはずですから、ゆっくり考えながら見たいのですが、この混雑ぶりではなかなか出来ません。チョット残念でした。
 あと驚いたのは、ダリと言えば大型キャンパスの作品を思い浮かべるのですが、けっこう小振りな作品の展示が多かったですね。大型作品は「世界教会会議」ぐらいでした。
 
 あまりの喧騒でじっくり拝見できなくて、チョット不満が残りました。でも、これだけの作品が展示される機会はめったにないでしょうから、今度は平日にでも、もう一度訪ねたいですね。 
 図録買いましたので、読んでから感想続けます。

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by daisenhougen | 2006-09-25 06:38 | 鑑賞記-展覧会

NHK交響楽団1577回定期公演/アシュケナージ/ベルキンを聴く

d0001004_15242275.jpgd0001004_15243938.jpg 昨日(9月23日)「NHKホール」で「NHK交響楽団1577回定期公演」を聴いた。
 演奏はウラディーミル・アシュケナージ指揮NHK交響楽団、ヴァイオリン:ボリス・ベルキン。
 演奏曲目はショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 作品77、ショスタコーヴィチ/交響曲 第10番 ホ短調 作品93。
 久しぶりのコンサートです。7月1日にオペラ「夢遊病の娘」を聴いて以来ですから、夏の間全くご無沙汰だったことになります。
 オール、ショスタコーヴィチという渋い曲目ということなんでしょうか、当日券でも余裕で入れました。
 さて、まずヴァイオリン協奏曲。スターリン体制下で作曲後の初演が大幅に遅れた曲だそうです。小生には初めて聞く曲です。あんまり不協和音とかも目立たずに、すんなりと入っていける曲でした。けっこう愉しめましたね。
 ボリス・ベルキンBoris Belkin(1948-)さんの演奏も初めて聴きました。旧ソ連出身で亡命した演奏家とのことです。曲を追っかけるのが優先でしたので、演奏うんぬんを言える段階ではありませんが、どちらかと言えば堅実な演奏と言った感じでした。もう少し自己主張しても良かった気がしましたね。
 次に、メインディッシュは10番の交響曲。この曲はスターリン死亡後、最初に書かれた曲で、歓喜にあふれている曲ですね。ただ、作品としては古色蒼然とした、ちょっと時代遅れの曲ですね。でもオーケストラの音を愉しむだけならうってつけの曲かもしれませんね。
 CDでショスタコーヴィチ交響曲全集をせっせと聞いている最中なので、ライブで聴けるのを楽しみにしていました。
 そしてやっぱり、こういった大編成のオーケストラ曲は演奏会場で聴かなくてはと改めて思いましたね。演奏者うんぬんじゃないですね(もちろんこの演奏が悪いワケじゃないですよ)。
 いずれにしても、音の饗宴を久々に楽しみました。やっぱり演奏会はいいですね。この秋から年末にかけてはコンサートにもっと通わなくてはなりませんね。

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by daisenhougen | 2006-09-24 06:22 | 鑑賞記-コンサート