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「芸術新潮2008年05月号」を拾い読み

d0001004_6495817.jpg 「芸術新潮2008年05月号」を拾い読みした。
 今回は生誕100年記念特集の「東山魁夷 国民画家の素顔」です。先月号と違って普通の厚さに戻ってます。特集としては80頁ほど使ってます。
 最初に「グラフ 代表作に大接近!」ということで、拡大図によって作品の細部を見せてくれます。一見するとシンプルに見える作品もかなり綿密に書き込まれていることが解ります。
 「第1章 風景画家の出来るまで」では幼年期から藝大時代、ドイツ留学、風景画の表現確立までを写真を交えて解りやすく伝えてくれてます。
 ただ両親の関係などはぼかしたままの記述でした。没後100年なんですからもう少し踏み込んでもよかった気もしますね。
 若い頃に絵本の挿絵など描いていたのには驚きました。特に「バラバルト」が楽しかったですね。魁夷さんもこういった方向へ進んだ可能性もあったんですね。
 「第2章 生誕100年展へようこそ!」では近美の学芸員、尾崎正明+鶴見香織の対談形式で今回の展覧会の見所を解説してくれてます。2人ともに図録にも論文寄せてましたが、チョット硬めの表現でした。この対談では実作の綺麗な写真と一緒に解りやすく解説してくれてました。あらためて魁夷の魅力と見方を伝授してもらいました。
 こうなると、ぜひもう一回見たくなりました(会期も残り少なくなって5月18日までですね)。

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by daisenhougen | 2008-04-30 06:49 | 雑誌など

「図録 東山魁夷展」を読む

d0001004_6481828.jpg 「図録 東山魁夷展」を読んだ。
 収録論文は3本で全て学芸員の執筆です。
 巻頭の尾崎正明「東山魁夷について」では魁夷の画風確立までを論じていますが、西洋絵画の影響下にありながら様々に試行錯誤し、表現が揺れ動いたことを論じています。魁夷がけっして一直線に表現を確立したわけでないことがよく解ります。
 「東山の風景画は、たんに自然の一画を切り取っただけのものではないし、必ずしもありのままの風景でもない。風景は東山の内面を通って濾過された上で、改めて二次元の世界に再構築されている」とは納得です。
 鶴見香織「東山魁夷のモノクローム絵画、水墨画」は目から鱗でした。魁夷のモノクローム作品の大半は岩絵具だったんですね。結局は墨による作品は唐招提寺壁画の第二期に至ってはじめて試みられていて、このときも胡粉を下地を使っていたとのことです。完全に墨で描いていると思ってました。いままで一体何を見てきたんだと自分の眼の節穴さに呆れてしまいます。
 伊藤羊子「水に映すー東山魁夷の倒影をめぐって-」は魁夷の水面に映った作品を論じています。なんと水面に映った作品が本制作1260点中241作品もあるとは驚きです。
 いずれも力のこもった力作でした。
 図版にはところどころに力のこもった解説が付いていましたし、もちろん作品選定も素晴らしいですから、魁夷の全貌を収録した保存版たる価値のある図録でした。

 発行:日本経済新聞社、制作:コギト、2008年、258頁。

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by daisenhougen | 2008-04-30 06:47 | 読書-展覧会図録

辻惟雄「奇想の江戸挿絵」を読む

d0001004_2003131.jpg 辻惟雄「奇想の江戸挿絵」を読んだ。
 いやいやまたもやすごい本を出してくれました。辻惟雄健在なりですね。
 北斎といえば日本を代表する絵師であり続けています。でもその多才な作品群から江戸挿絵を取り出してくる着眼点の鋭さはまさしく時代を何歩もリードしてます。
 だれもモノクロで粗末な紙に刷られた怪奇小説の挿絵に注目しませんね。それを敢えて取り上げて、その魅力をアジテートするんですから脱帽です。
 なんてったって馬琴と北斎という文字表現と絵画表現のゴールデンコンビの競作なのに誰も注目してこなかった領域ですからね。
 描かれているのが「異界」、「生首」、「幽霊」、「妖怪」てんですから半端じゃなです。江戸文化の爛熟ぶりと奥の深さが垣間見える領域ですね。まさしく奇想でしょうか。
 新書の形態での出版ですが、多数のというか、ほとんどが図版で占められていて、その素晴らしさがビジュアル面でも確かめることができました。
 江戸挿絵の魅力が十二分に伝わった著作でした。北斎をはじめとした浮世絵絵師の作品の中で正当な位置づけがされる切っ掛けとなるかもしれませんね。
 同じ時期に同じ新書という形態で出版された「岩佐又兵衛」(感想はこちら)と同様に辻さんが長年にわたって奇想の画家のキーワードで発掘してきた中で、世間的な認知度が進んでいない「江戸挿絵」をなんとしても復権したい意欲の表れですね。

 ただ、認知度を上げるには作品の展示の際に工夫が必要かもしれません。
 今までも何度か実際に展覧会の最後辺りにひっそりと展示してあるのに遭遇してますが、ザーッと駆け足で通り過ぎていました。
 ほとんどが冊子の見開き1ページがガラスケース越しに見ることができるだけで、どちらかといえば資料展示みたいな扱いでした。紙も粗末なものだったからでしょうが変色していますし、展覧会会場では貧相で目立ちませんでしたね。
 挿絵部分だけでも大胆に額装か何かで装丁し直して、連続して見せるぐらいは最低必要でしょうね。細部を見ないと何が何だか解りませんから間近に見ることも必須です。紙の古さを感じさせないような照明の工夫も必要かもしれません。
 どこかでこういった工夫を凝らした展覧会でも開催してくれないでしょうかね。
 
 集英社(集英社新書ヴィジュアル版)、2008年04月22日第1刷、1,050円、新書判、208頁。
 目次:はじめに 江戸後期挿絵の魅力、第1章 「異界」を描く、第2章 「生首」を描く、第3章 「幽霊」を描く、第4章 「妖怪」を描く、第5章 「自然現象」を描く、第6章 「爆発」と「光」を描く、第7章 デザインとユーモア。

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by daisenhougen | 2008-04-29 06:55 | 読書-詩歌小説評論他

「ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵初公開浮世絵名品展」を見る

d0001004_721161.jpg 昨日(04月27日)「いわき市立美術館」で展覧会「ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵初公開浮世絵名品展」を見た。
 この展覧会は昨年6月に「太田記念美術館」で開催されていました、それがほぼ1年かけて全国を巡回していましたが、最後がこの美術館でした。
 以前拝見した時は展示替えがあり後期分しか見ることができませんでした(その時の感想はこちら)。今回は全点一括展示ということなので再び拝見してきました。
 展示はまず最初が「華麗なる錦絵の展開」です。春信、歌麿、北斎、広重などの有名作も含めて展示してありました。

d0001004_735388.jpg つぎが「希少な団扇絵の世界」です。ここがこの展示の一番の目玉ですね。雑貨扱いの団扇絵ですから残っていること自体が奇跡的な作品達です。
 その後に「最盛期の狂歌絵本」、「肉筆画と版下/画稿」といった具合に展示は続いていました。
 前の展示を見た後に図録(その感想はこちら)も読んで復習していましたので(大半は忘却のかなたですけどね)、余裕をもって拝見できました。
 浮世絵の素晴らしさと奥の深さをあらためて感じさせてもらえました。
 日本での展示も終わりですから、もう二度と拝見できない可能性の高い作品達ですから、ゆっくり目に焼き付けました。

 常設展示はこの美術館おなじみのバリバリの現代アートです。
 浮世絵見た後に迷い込んできたお年寄りが目を白黒させていたのが可笑しかったですね。  草間彌生、藤原有可男、森村泰昌、アンディ・ウォーホール、ホックニーなど充実した展示でした。もう少し展示スペースが欲しいですね。

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by daisenhougen | 2008-04-28 07:33 | 鑑賞記-展覧会

「近代日本画にみる麗しき女性たち~松園と美人画の世界~」を見る

d0001004_17395744.jpg 昨日(04月27日)「茨城県天心記念五浦美術館」で展覧会「近代日本画にみる麗しき女性たち~松園と美人画の世界~」を見た。
 最近、この五浦美術館にせっせと通ってますね。最初に行ったのが昨年月の展覧会(感想はこちら)でしたが、今年早々にも訪れましたから(感想はこちら)、今回で3度目となります。日本画中心の展示ですから、好みに合うんですね。
 さて今回は松園と美人画と言うわたしの大好きなテーマですから外すわけにはいけませんね。
 展示は「Ⅰ.東京の近代美人画ー粋とロマン」、「Ⅱ.上村松園の世界」、「Ⅲ.京と浪花の女性表現」、「Ⅳ.戦後の女性像」といった区分での展示です。
 もっとも入って直ぐには松園さんの作品が出迎えてくれましたがね。
 最初のコーナーでは鏑木清方、池田輝方、池田蕉園、山川秀峰といった面々の作品が並んでました。

d0001004_17404190.jpg そしていよいよ上村松園さん。全国各地から集めた作品が初期から晩年までバランスよく揃ってました。今年初めに拝見したばかりの「水野美術館」のコレクションの「かんざし」とも再会できました(感想はこちら)。
 松園さんの作品は2005年の「山種美術館」の展覧会(感想はこちら)が18点、昨年の「福島県立美術館」の展覧会(感想はこちら)ですら60点ですから、今回の展示が全部で26点ほどですからチョットした個展レベルです。
 「紅葉可里図」、「櫻狩り図」、「花」、「かんざし」などなど香りたつ松園の美人画の世界を堪能させてもらいました。したしみやすい中にも凛とした姿勢がいいですね。
 次の2つのコーナーでは伊藤小坡、菊池契月、北野恒富、竹久夢二、土田麦僊、三木翠山、島城園、寺島紫明、谷角日沙春、岡本神草、甲斐庄楠音、木谷千種、小倉遊亀、梶原緋佐子、中村大三郎、伊東深水、中村貞以、広田多津、三谷十糸子、橋本明治、北沢映月、守屋多々志、森田曠平、石本正といった面々の作品が並んでました。
 この中では最近気になりだした中村大三郎さんの作品が「黒衣女人像」、「女人像」と2点展示してあったのは嬉しかったですね。
 ただ、戦後の女性像など時代が現代に近づくにつれてそれぞれが個性を前面に出し、とうてい麗しきとは言い難い作品が多くなってきてました。ちょっと複雑な感じでしたね。

 図録買ったので、読んでから感想続けます。

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by daisenhougen | 2008-04-28 07:26 | 鑑賞記-展覧会

「小泉淳作作品集」を読む

d0001004_17351677.jpg 「小泉淳作作品集」を読んだ。
 先日、小泉淳作さんの随筆集を読んでいたら(感想はこちら)、どうしても作品を見たくなりました。ネットで調べてみてももちろん今個展が開催されているわけもありません。
 それならばと、今度は画集を調べてみると、定価の6割ほどの価格で古本が売りに出ているじゃありませんか。以前買うのを躊躇していましたが、さっそく注文しました。
 届いてみると程度も悪くなかったですし、嬉しいことに小泉さんのサイン入りでした。ラッキーでしたね。
 小泉さんの代表作がことごとく収録されている作品集でした。
 1954年の初期作品から2001年までの作品とスケッチ、さらには建長寺雲龍図制作、建仁寺双龍図制作の写真まで収録されていました。
 ところどころに本人の文章「水墨画」、「牡丹華 時間を描く」、「シーラカンス」も収録されていましたし、さらに田中日佐夫「天と地に満つ「気」を描く―小泉淳作氏の絵画世界」、高橋玄洋「淳作先生の面構え」、竹田博志「四半世紀」といった論考で小泉さんの紹介がなされていました。
 さて作品ですが、初期のルオーばりの作品から、徐々に画風を確立するまでの過程がよく解りました。
 比較的大型の書籍ですが、やはり大作の迫力はこのような画集では伝えることは難しいようです。でも蕪などを描いた作品は充分その良さが伝わってきました。
 当分、折に触れては眺めることにします。
 でも、どこかで小泉さんの大規模な個展開いてくれないかなぁ。

 講談社、2002年04月10日第1刷、9,450円、B4変型、195頁。

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by daisenhougen | 2008-04-27 06:34 | 読書-詩歌小説評論他

李玉、金容権訳「朝鮮史 増補新版」を読む

d0001004_18234774.jpg 李玉、金容権訳「朝鮮史 増補新版」を読んだ。
 朝鮮・韓国については隣国にもかかわらず、基礎知識の絶対的不足を感じていました。そんな時に、古代からまさにホットな李明博大統領誕生までをコンパクトな一冊にまとめた通史の出版と言うことで、早速読んでみました。
 訳者あとがきに書いてある「朝鮮史の特徴はおびただしいほどの外敵による侵略と、それに対する民族を挙げての闘争」が良くわかります。2000年のあいだになんと500回とは・・・・。
 同じようにアジア大陸の端に位置しているとはいえ、ほんの僅かな例外を除いて侵略なしの歴史の日本とは大違いですね。
 朝鮮史を手っ取り早く仕込むのには役に立ちました。
 今度はもう少し詳しいものに挑戦したいですね。

 白水社(文庫クセジュ)、2008年03月30日発行、1,103円、新書版、177頁。
 著者の李玉金(1928-2005)さんはパリ第七大学教授、京畿大学教授を歴任した朝鮮学の泰斗とのことです。
 訳者及び補遺執筆の金容権(1947-2005)さんは早稲田大学卒で朝鮮現代史専攻とのことです。
 目次:第1章 上古、第2章 半島における新しい国家の形成(前一世紀~七世紀)、第3章 新羅の隆盛期(六五〇年頃~九一八年)、第4章 高麗時代(九一八~一三九二年)、第5章 李朝時代(一三九二~一九〇一年)、第6章 日本の支配(一九一〇~一九四五年)、第7章 一九四五年以降の朝鮮、訳者補遺。

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by daisenhougen | 2008-04-26 07:31 | 読書-詩歌小説評論他

川尻秋生「揺れ動く貴族社会(全集 日本の歴史 第4巻)」を読む

d0001004_8135773.jpg 川尻秋生「揺れ動く貴族社会(全集 日本の歴史 第4巻)」を読んだ。
 この巻の対象期間は9世紀初から11世紀初までの200年間です。
 いわゆる平安時代ですから、日本独自の文化が確立し、華やかな宮廷文化が連想される時代です。でも、著者はかなり違った視点からこの時代を描き出しています。
 数々の戦乱の発生に怯え、災害や疫病に脅やかされた貴族社会の生活や庶民の暮らしの実情などを詳しく描いています。これらが天台宗、真言宗などの新仏教の登場や浄土教信仰流行の背景にあったんですね。
 この時代がけっして華やかな宮廷文化にいろどられていたのではないのがよくわかります。
 単なる政治を中心とした歴史記述ではなく、幅広い視点からこの時代を描こうとする意欲にあふれていました。

 小学館、2008年03月30日初版1刷、2,520円、A5版、363頁。
 著者の川尻秋生(1961-)さんは日本古代史専攻で早稲田大学文学学術院准教授とのことです。
 目次:第1章 『古今和歌集』の時代を考える、第2章 古代国家の変容、第3章 列島の災害と戦禍、第4章 受領の成立と列島の動乱、第5章 新しい仏教、第6章 貴族の生活、第7章 都市の暮らしとムラの生活、第8章 東アジアとの外交と列島。

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by daisenhougen | 2008-04-25 06:41 | 読書-詩歌小説評論他

雑誌「美術手帳2008年5月号」を拾い読み

d0001004_14293162.jpg 雑誌「美術手帳2008年5月号」を拾い読みした。
 「美術手帳」って1948年創刊で今年で60周年だそうです。すごい歴史がある雑誌だったんですね。今回はリニューアル新装刊だそうです。
 雑誌としてはだいぶ薄くなったことと、展覧会情報がチョット変わったごとぐらいでしょうか。判型が小さいことや、文字が小さいのは相変わらずですね(わたし的には文字はもう少し大きくして欲しいですね)。せっかくなんだから、もう少し大胆に変えた方が良かった気がしますね。
 今回の特集は「あらうんど THE 会田誠」という会田誠特集号となってます。会田さんといえば昨年、「アートで候 会田誠 山口晃展」で作品をまとめて拝見しました。
 その時に、キチンとした技法に裏付けされた平面作品の大作と、何を目指してるか解らないサブカルチャーとの境界線にある作品のギャップが気になりました。
 今回の特集はどちらかといえば後者を前面に出した特集のようです。
 この辺りは、ザーッと読んでみても、いまだ良くわかりませんでした。
 でも、おまけに「会田誠*加藤愛オリジナルエコバック」が付いてました。エコバックに「偽善?」なんて書いてあって、毒たっぷりなとこが気に入りましたね。毒をたっぷり仕込みながらも風俗に限りなく近いといったとこが狙いなんでしょうか。
 「アートで候」展に新作として展示してあった「滝の絵」が今だに手を入れてるのにはビックリしました。会田さんがサブカルチャーや風俗的方面ばかりで遊んでいるのでないこと解りますね。
 動向をウォッチしていく必要のあるアーチストであることは間違いないですね。

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by daisenhougen | 2008-04-24 07:28 | 雑誌など

川上弘美「風花」を読む

d0001004_20533375.jpg 川上弘美「風花」を読んだ。
 川上さんの作品は長編小説としては2006年「真鶴」、エッセーも含めれば昨年の「東京日記2」以来です。
 「すばる」に2004年01月から2007年10月まで連載されたものです。
 嬉しいことにカバーは有元利夫さんの陶芸作品を使っています。「真鶴」の時は高島野十郎でしたから、いいセンスしてますね。
 今回のテーマは結婚生活の危機といったとこでしょうか。
 結婚7年目の主人公のゆり、夫の卓哉が2人の女性と浮気をし、その内の一人から電話がかかってきたり、夫の浮気相手が妊娠しちゃったり、夫の浮気相手と二人っきりで会ったり、別れてくれと迫られたり、のゆりが別れたくないと夫にせがんだり、ついには別居したり・・・・。
 まあまあ写してみると完璧にドロドロの世界ですね。
 でも、川上さんですから修羅場を描いたってまったくもってふんわり、あっさり、輪郭はぼんやり、いってみれば霞の中にいるように物語は進行して行きます。
 現実というよりも遠くで進行している、まるで午睡の夢のようですね。
 それぞれのタイトルのように季節の移ろいの中に淡々と物語は進行して行きます。
 そして随所に詩的イメージと独特で繊細な言葉使い。
 題材は変われども、この辺りはわたしの好きな川上ワールドそのものです。
 結局のところ最後は、のゆりが一人の女性として、夫に頼らずに自立的に生きてゆける気持ちにまで吹っ切れたところで終わりました。
 女性のたくましさでもあり、適応能力の高さでしょうか。
 まぁ、男の目から見ると、最後ののゆりはチョット格好良すぎですし、卓哉は自業自得とはいっても、チョット間抜けってとこですかね。

 「通りの向こうの、黄色く灯る看板をめざして、のゆりはどんどん歩いていった。クラクションが遠くで鳴って、のゆりは自分が赤信号を渡っていることに気づいた。
 止まらずに、このまま渡っちゃえばいいんだ。思いながらのゆりは駆け出した。
 振り向くと、卓哉は歩道に立ってのゆりを見ていた。
 まぶしそうに額に片てのひらをかざし、もう片方の手ではキャリアを引き、拓哉はまるではじめてのものを見るように、のゆりの姿をじっと見ているのだった。」

 集英社、2008年04月10日第1刷、1,470円、四六判、287頁。
 目次:風花、夏の雨、大寒、立春、春昼、夏至南風、阿檀、文月、夕凪、小春、松の内、冬の庭、下萌。

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by daisenhougen | 2008-04-23 20:55 | 読書-詩歌小説評論他