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松本仁一「アフリカ・レポート」を読む

d0001004_11574752.jpg 松本仁一「アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々」を読んだ。
 アフリカといえば、日本の常任理事国入りにはアフリカの支持が不可欠だとか、レアメタルの宝庫だから関係強化が大事だとかいった功利的な議論ばかりが目についています。
 でも、肝心なアフリカについてのリアル情報に接する機会はあんまりありませんね。
 そんな中で、手軽な形の著作が出ましたので、さっそく読んでみました。
 冒頭から、衝撃的な話から始まりました。
 ジンバブエの超インフレ。それを引き起こしたのは、政治指導者の腐敗と農業政策のデタラメさにあり、優良農業国が一瞬にして崩壊していく姿がリアルに描かれています。まさしく目を覆いたくなるような姿です。
 アフリカ諸国のほとんどが、政治的腐敗の中にあり、無能、無策の政策が行われており、貴重な天然資源の利益はほとんどが一部の指導者の手に渡っているひどい実体がわかります。
 人種差別からの解放を勝ち取った南アフリカですら、政治的腐敗が蔓延し、治安が極端に低下しているとは・・・。
 壮絶な部族間の抗争と国家・国民より部族の利益を優先する体質も良くわかりました。そういえば部族間の抗争の悲劇については、「ホテル・ルワンダ」といった映画を見たことがあります(その時の感想はこちら)。
 次々に描かれたアフリカ諸国の実体に驚き、あきれ果て、言葉もありませんでした。
 更に、だめ押しとして、「あとがき」に書かれたまさしく今起こっている、ジンバブエのムカベ政権の大統領選挙の強権的弾圧と不正です。平気で対立陣営を弾圧し政権を奪取できるとは・・・。しかもアフリカ諸国の指導者がそれを支持し続けているとは・・・。
 アフリカの未来に悲観を通り越して絶望的にすらなってしまいます。
 もちろん著者は新聞社の論説委員だっただけあって、バランス取るかのように草の根的な活動から一筋の光明を見いだそうとしています。
 でも、これらの活動がアフリカの政治状況を作り替える力には、あまりに非力ではないのかなぁといった印象でした。
 いずれにせよ、わたし自身のアフリカに対する無知さを思い知らされるとともに、アフリカについて目を開かせてくれた著作になりました。
 
 著者の松本仁一(1942-)さんは朝日新聞社の中東アフリカ総局長、編集委員を歴任した後、2007年に退職し、現在はフリーのジャーナリストとのことです。
 目次:序章 アフリカの今―ルムンバの夢はどこへ行ったか、第1章 国を壊したのは誰か―ジンバブエで、第2章 危機に瀕する「安全」と「安心」―南アフリカ共和国で、第3章 アフリカの中国人―南アで、アンゴラで、スーダンで、第4章 国から逃げ出す人々―パリで、歌舞伎町で、第5章 「人々の自立」をめざして―農村で、都市スラムで、第6章 政府ではなく、人々に目を向ける―ケニアで、ウガンダで、セネガルで。
 岩波書店(岩波新書)、2008年8月20日第1刷、735円、新書判、224頁。

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by daisenhougen | 2008-08-31 07:56 | 読書-詩歌小説評論他

「図録 コロー 光と追憶の変奏曲」を読む

d0001004_8263563.jpg 「図録 コロー 光と追憶の変奏曲」を読んだ。
 この展覧会を拝見したのは先月の13日ですから、ずいぶん時間がたってしまいました(その時の感想はこちら)。
 会期も今月いっぱいですので、週末で終了です。
 終了前に再訪しようと思っていますので、その前に図録を読んでみました。
 まず、巻頭には総合監修の3名の論文が収録されていました。
 高橋明也「カミーユ・コロー 現在を生きる19世紀の画家」、ヴァンサン・ボマレッド「「彼は目で見た現実によって夢想を支える・・・。」コロー、その生涯と作品」、マイケル・バンタッツィ「抗い難い調和」です。
 それぞれがコローの魅力と影響について詳しく論じてくれてます。読み応えがありますね。
 とりわけ高橋さんの論文ではこの回顧展の目的を明確に示してくれてます。すなわち、「初期から晩年に至るコローの芸術のあらゆる局面を紹介・展開すること」と「コローの作品がもっている強固な現代性(モデルニテ)を検証すること」としています。
 この目的はじゅうぶん果たされていますね。
 図版はそれぞれの章ごとに解説と作品毎に詳しい解説が一緒に載ってます。解説を読みながら図版を眺めれば、コローのすばらしさが納得できる仕掛けになってます。
 巻末には監修の2名の論文が収録されていました。岡泰正「カミーユ・コローと日本」、陳岡めぐみ「松方コレクションとコロー」。
 日本との関わりが中心の論文でした。
 その他にも参考地図、年譜、主要参考文献、多作家解説、作品リストと資料も充実していました。
 編集:陳岡めぐみ、国立西洋美術館、デザイン・制作:美術出版、制作・発行:読売新聞社、278頁。

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by daisenhougen | 2008-08-30 08:27 | 読書-展覧会図録

辻惟雄ほか「幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション」を読む

d0001004_16465453.jpg 辻惟雄ほか「幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション」を読んだ。
 書店に平積みでドーンと並んでました。夏といえばオバケですから季節ものの扱いですね。
 ましてや辻惟雄さんの監修となれば読むしかないですね。
 でも、よく見ると1995年07月にぺりかん社より刊行された本の再刊のようです。
 この夏は「オバケが出たゾ~ -描かれた妖怪たち-」を見てきましたが(その時の感想はこちら)、今回はオバケといっても妖怪ではなく幽霊です。
 妖怪と幽霊は違うという説と同じという説があることが、巻頭の辻さんんの論文で紹介されていました。けっこう面白い論争のようです。
 河野元昭さんの論文では幽霊画の祖は応挙であるという俗説とその反証など興味深い話が満載でした。
 ここに収録されている幽霊画は三遊亭円朝のコレクションとのことです。現在、残っているのは50点ですが、実際はもっと多くのコレクションがあったようで、散逸した方が名品が多かったようだとは悔しいですね。
 そうはいってもコレクションとしてはかなり見応えがあります。
 有名どころは応挙や広重、暁斎、由一といったところぐらいで、大半は知らない画家達ですが、力作揃いですね。
 それらの力作をそれぞれの論文での解説と一緒に眺めると興味満点でした。
 目次:幽霊画と妖怪画―円朝の幽霊画コレクションをめぐって(辻惟雄)、カラー図版 全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション、応挙の幽霊―円山四条派を含めて(河野元昭)、日本人の幽霊観と全生庵幽霊画(諏訪春雄)、幽霊の“像”の変遷(高田衛延広真治)、怪談牡丹燈篭(延広真治)、全生庵の幽霊画コレクション(安村敏信)、図版解説(安村敏信)。
筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2008年08月10日第1刷、1,575円、文庫版、266頁。

 ネットで調べてみると「全生庵」でこのコレクションが今年も公開されているようです。会期は今月いっぱいですから、ギリギリ間に合いそうです。
 週末になんとか訪れたいですね。

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by daisenhougen | 2008-08-29 06:57 | 読書-詩歌小説評論他

田中希美男「「デジタル一眼」上達講座」を読む

d0001004_1420171.jpg 田中希美男「「デジタル一眼」上達講座」を読んだ。
 初めてのデジタル一眼カメラCANON EOS Kiss X2 ダブルズームキットを買ってから、もう少しで3週間です(購入記はこちら)。
 「1週間マスターBOOK」なども読んで(その時の感想はこちら)、大体の操作方法は理解できましたが、もう少し突っ込んだ情報も欲しいので読んでみました。
 デジタル一眼を使うんだから「オート」モードなど使ってはいけない。「プログラム」モードにしなさいから始まり、ピント設定は中央一点のスポットAFにしなさい、ISO感度はオートでいい、ホワイトバランスもオートでOK、画質モードはjpeg、Lサイズのノーマル、測光モードはマルチパターン測光、手ぶれ補正は常時オンにしなさいなどと、理由を明快に説明しながら指南してくれています。
 その後も撮影の基本から交換レンズの選び方まで至れり尽くせりです。
 わたしには素晴らし指南書です。折に触れて読み返す気がします。
 当分はこの指南書頼りにEOS Kiss X2を使い込んでいこうと思います。

 著者の田中希美男(1947-)さんはフリーランスのフォトグラファーとのことです。人気写真ブログ「Photo of the Day」も主宰しているようです(こちら)。
 目次:第一章 「デジタル一眼」を使いこなす設定極意、第二章 「マニュアル」ではわからない「デジタル一眼」使いこなしのツボ、第三章 これだけは知っときたい「デジタル一眼」撮影のキホン、第四章 やっぱり愉しい交換レンズ選び、第五章 違いがわかる「人」「もの」「風景」撮影の極意、第六章 「デジタル一眼」メンテナンス術。
 アスキー・メディアワークス、2008年08月10日初版、980円、新書版、192頁。

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by daisenhougen | 2008-08-28 07:19 | 読書-詩歌小説評論他

「週刊世界の美術館 第5号 ウィーン美術史美術館(1)」を読む

d0001004_14161069.jpg「週刊世界の美術館 第5号 ウィーン美術史美術館(1)」を読んだ。
 現在開催中のフェルメール展に引っかけて、「絵画芸術の寓意」を表紙にもってきましたが、残念ながらこの作品の来日は中止になってしまいましたね(フェルメール展の感想はこちら)。
 ウィーン美術史美術館といえば、現在開催中の「静物画の秘密」展はこの美術館のコレクションの展示です。ただ、大挙来日している中で、この週間本に図版で紹介されているのはヤン・ブリューゲル(父)の「青い花瓶の花束」だけです(静物画の秘密展の感想はこちら)。それだけ、この美術館の収蔵品には名品が目白押しということなんでしょうね。
 この号はフェルメールが特集でした。
 目次:<東ウィング2階必見のベスト3>ベスト1 「絵画芸術の寓意」フェルメール、今さら聞けない名画の秘密、ベスト2 「大自画像」レンブラント、ベスト3 「聖三位一体の礼拝」デューラー、比べてわかる!名作の裏側「バベルの塔」ブリューゲル(父)、名画ギャラリー、見落とせないこの一点「原罪と贖罪」、東ウィング2階の歩き方、画家の生涯 ヨハネス・フェルメール、フェルメールの頃日本では、名画に隠されたメッセージ 鏡、ウィーン市内の美術散歩。 講談社、2008年08月28日発行、580円、A4変形、35頁。

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by daisenhougen | 2008-08-27 07:03 | 読書-詩歌小説評論他

「週刊世界の美術館 第4号 ヴァティカン美術館(1)」を読む

d0001004_1414237.jpg 「週刊世界の美術館 第4号 ヴァティカン美術館(1)」を読んだ。
 この号のヴァティカン美術館といっても美術館だけではなく、サンピエトロ大聖堂などを含めた、まさにヴァティカンそのものを指しているようです。
 でも凄いですね。カトリック美術の最高峰がゾロゾロといった感じです。
 しかも大聖堂の壁画などは物理的に来日なんてできませんし、そもそもカトリックのお宝が来日なんてあり得ませんね。
 そういった意味でも、海外に美術品を見るのに訪れる場合、一カ所だけしか行けないとすればやっぱりこのローマ/ヴァティカンなんでしょうかね。
 この号ではミケランジェロが特集でした。
 目次:<神の館を彩る名画必見のベスト3>ベスト1 「最後の審判」ミケランジェロ、今さら聞けない名画の秘密、ベスト2 「アテネの学堂」ラファエロ、ベスト3 「ニコラウス5世礼拝堂壁画」フラ・アンジェリコ、比べてわかる!名作の裏側「ピエタ」ミケランジェロ、名画ギャラリー、見落とせないこの一点「モーセの試練」(部分)ミディアンの娘たち ボッティチェリ、サンピエトロ大聖堂から教皇宮殿への歩き方、画家の生涯 ミケランジェロ・ブオナローティ、ミケランジェロの頃日本では、名画に隠されたメッセージ ハトと聖霊、ヴァティカン界隈の美術散歩。
 講談社、2008年08月21日発行、580円、A4変形、35頁。

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by daisenhougen | 2008-08-27 07:00 | 読書-詩歌小説評論他

吉増剛造「表紙 omote-gami」を読む

d0001004_754918.jpg 吉増剛造「表紙 omote-gami」を読んだ。
 「現代詩手帖」の表紙写真の連載とその時期に撮られた写真と日記、それに幾つかの詩をあわせた作品集です。
 分類としては詩集というよりは写真集というべきなんでしょうね。
 ただ、写真集といってもフルパノラマサイズで多重露光の重ね撮りの作品です。日記から推測するに富士フイルムのTX-2というカメラで撮られた作品のようです。
 そもそも写真というものは、あまりに明快すぎるところがあって、ひと目でわかった気にさせてしまうことがあります。
 その為、じっくりとその中に込められた意味を読み解くことが、しにくい表現形態かもしれません。
 その特性に対抗するかのように、詩人たる吉増剛造(1939-)さんは、これらの写真を多重露光の重ね撮りによって、意味の多重性を持たせて、わざわざ難解にしています。
 写真に込められた表現を、じっくりと読み解くことを強いています。
 写真表現による現代詩的表現の試みともいうべきでしょうか。
 写真と一緒に納められた詩ともいうべき日記を手がかりに、写真を行ったり来たりしてみました。
 なんとはなしに芸術写真のようであり、かなりサマにはなっている表現ではあります。
 でも、いまひとつ心に染みこんできません。
 面白い試みではあるんですが、何かがたらないといった印象でした。この試みにミューズはまだ微笑んではくれていないのかもしれません。
 詩人の余技としては面白い気もします。
 近年の吉増さんは詩だけでなく絵画的表現や映像表現まで領域を拡げているようです。果敢な試みに期待は大きいですが、表現が薄まったり、拡散しないことを祈ります。

 思潮社、2008年04月25日発行、5,040円、B5版、173頁。

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by daisenhougen | 2008-08-26 06:53 | 読書-詩歌小説評論他

雑誌「文藝春秋 9月特別号」を拾い読み/楊逸「時が滲む朝」

d0001004_9262123.jpg 雑誌「文藝春秋 9月特別号」を拾い読みした。この号は恒例の芥川賞発表号で第139回 芥川賞は楊逸さんの「時が滲む朝」でした。
 初めての中国人による芥川賞受賞ということで話題になってますね。
 まず選考委員による選評です。石原慎太郎、高樹のぶ子、池澤夏樹、村上龍、川上弘美、黒井千次、宮本輝、小川洋子、山田詠美といった日本文学に重鎮によるコメントが載ってます。
 紋切り型の陳腐な表現に対する違和感の表明が目につきました。
 次に受賞者、楊逸(ヤン イー)(1964-)さんのインタビュー「天安門とテレサ・テンの間で」が掲載されていました。家族と一緒に下方政策で辺境に地に追いやられたことから、天安門事件、日本への留学、結婚、離婚といったことが語られていました。あっけらかんと語られているとこが大陸的なのでしょうかね。
 さて、いよいよ受賞作の「時が滲む朝」です。
 インタビューで語られていたことが、設定こそ男に変えてありますが、ほぼ同じように描かれています。自伝的色彩の強い作品ですね。
 政治に翻弄され、政治的な主張を唱え、挫折しといったことが古典的描写で描かれています。選評にあったように紋切り型の描写がいささか興をさまされたのも確かでした。
 そしてテレサ・テンと尾崎豊の歌詞がモチーフの中心てのも底の浅さが見え見えになってました。
 でも、政治といったものを中心主題として描く姿勢は懐かしくもあり、羨ましくある気もしました。
 前回の受賞作、川上未映子「乳と卵」(その時の感想はこちら)は描くことはほとんどなくなり、些細なことにこだわりにこだわって、そのことを表現の新しさでカバーしようとしたこととは対極にあるようでした。

 その他には「異形の大国」中国に問う─、日本の師弟89人といったこの雑誌のいつもの記事が満載でした。あんまり興味をそそる記事は見あたらなかったですがね・・・。

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by daisenhougen | 2008-08-25 07:25 | 雑誌など

「キヤノンEOS Kiss X2 1週間マスターBOOK」を読む

d0001004_16172447.jpg 「キヤノンEOS Kiss X2 1週間マスターBOOK」を読んだ。
 カメラ雑誌CAPAのカメラムックです。
 わたしにとって初めてのデジタル一眼レフEOS Kiss X2です。
 買っていくらも練習しないうちに旅行に持って行きました。自己流であってもそれなりに撮れてましたし、けっこう操作もなれてきた気もしています。でも、やっぱり一応は一通りの操作方法はチェックしておこうと読んでみました。
 概ね基本的な操作方法が中心で、あんまり目新しい情報が載っているわけではありませんが、一通りの機能を試してみるガイド役にはなってもらえました。
 昨日は、終日、この本をガイド役にEOS Kiss X2いじっていました。
 室内と家の周り中心に撮りまくってみました。
 目下のところ、中年おじさん一番のおもちゃになってしまってます。
 今度はどこに遠征してみようか思案中です。

 目次:EOS Kiss X2の各部の名称、EOS Kiss X2の初期設定、OS Kiss X2 1週間マスター(Day 1 撮影準備と基本操作、Day 2 フレーミングで写真が変わる、Day 3 きれいな花の写真を撮る、Day 4 明るさを調整する露出補正、Day 5 背景の写り方を変える絞り、Day 6 シャッター速度と動体の描写、Day 7 室内や暗い場所での撮影、知らないと損する 便利な機能、カメラのメンテナンス方法)、EOS Kiss X2 シーン別実践ノウハウ(Scene 1 ペット、Scene 2 花、Scene 3 子ども、Scene 4 散歩、Scene 5 旅、Scene 6 自然風景、Scene 7 夕景・夜景、Scene 8 テーブルフォト)、EOS Kiss X2 実用ノウハウ 撮影後の保存、整理、調整、プリント。
 学習研究社、2008年06月30日発行、1,100円、AB判、84頁。

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by daisenhougen | 2008-08-24 08:16 | 読書-詩歌小説評論他

雑誌「現代思想 総特集=吉本隆明」を拾い読み

d0001004_15321214.jpg 雑誌「現代思想 2008年8月臨時増刊号 総特集=吉本隆明 肯定の思想」(青土社)を拾い読みした。
 最近、吉本さんの集大成的な出版が相次いでいますね。
 詩全集も完結しましたし、「情況への発言」全集成も出ました。「心的現象論」本論もようやく入手しやすい形で出版されましたね。講演の音声データまで刊行されました。
 こういった中で、吉本さんの思想を振りかえってみようといった試みのようです。
 巻頭にインタヴュー「肯定と疎外 課題としての現在」が掲載されています。吉本さんの思想を年代を追って語ってもらっています。
 いろいろ過去の吉本さんの思想を振りかえるのも大切でしょうが、今の吉本さんの思想の方が興味あります。
 現在を「第二の産業革命期」ととらえ、産業革命期に肺結核が蔓延した代わりに蔓延しているのが精神病であると喝破してるのはさすがですね。
 そして富の蓄積の不均衡を止めるやり方を生み出せる格好の位置にあるのは、日本だけであるとしています。もちろんそのやり方は吉本さんが先鞭を切って構築してほしいですね。
 吉本さんには、もう一段の思想的飛躍を期待したいですね。

 インタビュー以外もいろんな論考が掲載されてました。「詩と言葉」、「共同幻想論」、「やましさと肯定」、「思想史的読解」、「宗教」、「イメージ論」といった区分で複数の論文が収録されていました。
 読みやすい論文を選んでパラパラと飛ばし読みしてみました。
 巻末の著書年表は整理されていてよかったですね。

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by daisenhougen | 2008-08-23 07:31 | 雑誌など