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塚本邦雄歌集「寵歌變」(短歌新聞社)を読む

 塚本邦雄歌集「寵歌變」(短歌新聞社)を読んだ。新しく刊行された「新現代歌人叢書」の1巻目として著者自選の「寵歌」に追補して著者の全歌集からの選歌集としたもの。 6月9日に84歳で亡くなった塚本さんの遺作ともいうべき選歌集なので、遅ればせながら追悼の気持ちで読んだ。
 塚本さんは二十四冊に及ぶ序数歌集とその他の歌集がある。小生はその内晩年の「波瀾」、「黄金律」、「風雅黙示録」、「汨羅変」、「詩魂玲瓏」、「約翰傳偽書(ヨハネでんぎしょ)」は発行時に読んできたが、最も脂ののっていた時期は残念ながら後追いで選歌集などでしか知りません。でも塚本さんは戦後を最も代表する歌人ですね。この難解さは良かれ悪しかれ戦後の表現そのものですね。
 正岡子規に始まり斉藤茂吉が完成させた近代短歌を、戦後に塚本さんと岡井隆が徹底的に解体しきったと理解しています。現在はその解体されバラバラになり、意味不明にまで陥った短歌をどうやったら救い出せるかを試行錯誤している段階ではないでしょうか。
 今回の選歌集は
 ・妻よ僕らのシーツの中の眞青の魚を一ぴきかくしてゐたか(初學歷然)
からはじまり
 ・玩具函(おもちゃばこ)のハーモニカにも人生と呼ぶ獨房の二十四の窓(約翰傳偽書(ヨハネでんぎしょ))
 まで約500首が選ばれている。もちろん以下の様な超有名作ももれなく含まれているようです。
 ・革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ(水葬物語)
 ・暗渠の渦に花揉まれをり識らざればつねに冷えびえと鮮(あたら)しモスクワ(装飾樂句)
 ・日本脱出したし皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも(日本人霊歌)
 ・馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ(感幻樂)
 小生の愛読した晩年の作品から選ばれている作品が少ないのは残念ですが、やっぱり作品のできばえからは仕方がないんでしょうね。
 何はともあれ、久しぶりに塚本さんの短歌の世界を堪能させてもらいました。もう新しい歌集が出ないのが残念です。

by daisenhougen | 2005-07-29 09:34 | 読書-詩歌小説評論他
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