四方田犬彦「「かわいい」論」を読む

d0001004_14442635.jpg 四方田犬彦「「かわいい」論」(ちくま新書)を読んだ。
 四方田さんの今度の新刊はなんと「かわいい」論と来ましたね。ずっしりと重いパレスチナ・セルビア紀行から一転して、その極北にあるようなキティちゃんやキューティ・ハニー論と来ましたか。さすが四方田さんですね。その強靱な頭脳の胃袋には感嘆してしまいますね。まさに今、最もビビットな書き手かも知れませんね。
 目次を写しておきます。これだけでも概要は解りますね。第1章「かわいい」現象、第2章「かわいい」の来歴、第3章大学生の「かわいい」、第4章美とグロテスクの狭間に、第5章小さく、幼げなもの、第6章なつかしさ、子供らしさ、第7章メディアのなかの「かわいい」、第8章「萌え」の聖地、第9章「かわいい」、海を渡る、エピローグ「かわいい」の薄明。
 21世紀の美学として「かわいい」をとらえ、枕草子まで来歴をたどり、さまざまな「かわいい」の諸相を論じる手際は見事なものですね。
 最後に「エピローグ」から少し引用しておきます。
 「「かわいい」とはつねに儚げなものであり、ヴァルネラビリティに満ちた存在である。それはまったくの偶然から、たやすくグロテスクで脅威的な怪物へと変身してしまう。(中略)破局がこれまで回避されてきたのはひとえに「かわいい」という概念の薄膜が、われわれを現実に直面することから隔てていたからにすぎないからだ。
 「かわいい」の薄明はすぐそこにまで迫っている。だがその終焉を無視するかのように、「かわいい」はわれわれの想像的空間にあっていっそう権能を誇り、現代社会の神話として眩しげな威光を放っている。」

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by daisenhougen | 2006-02-11 14:44 | 読書-詩歌小説評論他
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