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近藤史人「藤田嗣治「異邦人」の生涯」を読む

 近藤史人「藤田嗣治「異邦人」の生涯」(講談社文庫)を読んだ。
 藤田嗣治展を再訪する前に予習として読んでみました。展覧会巡りの電車の中で読み始めました。著者の近藤史人さんはNHKのディレクターで、藤田嗣治再評価のきっかけを作った一人のようですね。
 目次を写しておきます。第1章 修行時代、第2章 パリの寵児、第3章 皇国の画家、第4章 さらば日本、第5章 「美の国」へ。
 藤田嗣治の生誕からパリで亡くなるまでの生涯をジャーナリストの眼で描いた作品です。藤田さんの生涯のアウトラインはこれでわかりますね。
 平野政吉との美術館設立をめぐる顛末(最後はけんか別れなんですね)、ノモンハンを描いた「哈爾哈(ハルハ)河畔之戦闘」に失われたもう一枚があった話、アメリカ滞在中にベン・シャーンと国吉康雄が「フジタはファッショ画家」と抗議声明を出した話、戦争画が十四点アメリカから返還された経緯等々興味深い話が満載です。ジャーナリストとしての面目躍如ですね。
 絵を鑑賞する上でも、「猫(争闘)」が日本から再びパリに戻り戦時下のパリで書かれたことや展覧会のパンフレットにもなっている「カフェ」が一時滞在のアメリカで書かれたことなどは、有益な指摘ですね。
 ただ、藤田絵画の歴史的位置づけや絵画の魅力についてはほとんど見るべき箇所はありません。あくまでもジャーナリストが書いた伝記として割り切って読むべき本ですね。もちろん、それに徹しているのが、この本の長所かもしれませんね(へたな芸術論など読まされたら迷惑ですからね)。

by daisenhougen | 2006-04-24 11:56 | 読書-詩歌小説評論他
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