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辻惟雄「奇想の系譜」を読む

 辻惟雄「奇想の系譜」(ちくま文庫)を読んだ。「日本美術の歴史」を読んで、辻さんに興味惹かれました。この本は刊行時には絵画史を書き換える画期的著作とされたそうです。気になっていた本ですが、やっと通読しました。
 1968年に「美術手帳」に連載された「奇想の系譜-江戸のアヴァンギャルド」に基づき「江戸時代における表現主義的傾向の画家-奇矯(エキセントリック)で幻想的な(ファンタスティク)なイメーの表出を特色とする画家-の系譜をたどった」とのことです。
 目次は次の通り。憂世と浮世―岩佐又兵衛、桃山の巨木の痙攣―狩野山雪、幻想の博物誌―伊藤若冲、狂気の里の仙人たち―曽我蕭白、鳥獣悪戯―長沢蘆雪、幕末怪猫変化―歌川国芳。
 その当時に、ほとんど評価されていなかった、これらの画家を復権させたんですね。
 「あとがき」で「<奇想>という言葉は、エキセントリックの度合の多少にかかわらず、因襲の殻を打ち破る、自由で斬新な発想のすべてを包含できるわけであ」る、とし、北斎や雪村、永徳、宗達、光琳、白隠、大雅、玉堂、米山人、写楽が仲間であり、「近代絵画史における主流といってさしつかえない」と宣言しています。更に「ここにあげた六人の画家は、そうした<主流>の中の前衛として理解されるべきである」としています。
 日本絵画史への興味がますます深まりました。辻惟雄さんの著作はもっと、もっと読まなくてはなりませんね。
 
 今から中国に出張ですので、数日間、ブログはお休みです。

by daisenhougen | 2006-05-21 09:44 | 読書-詩歌小説評論他
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