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トルストイ「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」を読む

 トルストイ「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」(光文社古典新訳文庫)を読んだ。
 トルストイの作品なんて読むのは何年ぶりでしょう。多分「アンナ・カレーニナ」と一緒に「イワン・イリイチの死」と「クロイツェル・ソナタ」を高校時代に読んで以来だと思います(「戦争と平和」は途中で断念したんですね)。
 でも、こういった古典を再読する気にさせるのも、「古典新訳文庫」のおかげですね。
 今回の新訳の訳者の望月哲男(1951-)さんはロシア文化・文学専攻の北海道大学教授とのことです。
 さて、この2つの短編は凄い内容の小説ですね。圧倒するような内容にたじろいでしまいます。読んでいて、どんどん引き込まれる、でも読むのが苦痛になる、でも読まずにいられないといった作品です。
 「イワン・イリイチの死」の死に直面した時の葛藤や「クロイツェル・ソナタ」の嫉妬で妻を殺すにいたる動機の追求の徹底性は半端じゃありませんね。これだけ冷徹に描かれてしまうと言葉もありません。文学が力を持っていたときの作品ですね。まさに傑作の名に恥じない作品です。ちょっと刺激が強すぎますが、中年が読むにふさわしい作品ですね。 こういった作品は、尻のあおい高校生じゃ理解できないのも無理ありません。言い訳じみますが、再読といっても、以前読んだ記憶は全く甦りませんでした。

by daisenhougen | 2006-11-29 07:01 | 読書-詩歌小説評論他
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