原田敬一「日清・日露戦争「(シリーズ日本近現代史3)」を読む

d0001004_21144532.jpg 原田敬一「日清・日露戦争(シリーズ日本近現代史3)」を読んだ。
 岩波書店(岩波新書)、2007年02月20日第1刷、819円、新書判、272頁。
 目次は次の通り。はじめに――日本へアジアへ、第1章 初期議会(憲法実施の一挙/第一議会の攻防/積極主義への転換)、第2章 条約改正(シベリア鉄道と日本/引き続く議会との対立/伊藤博文と自由党の模索/条約改正と帝国議会)、第3章 日清戦争(協調からの離脱/朝鮮と日本の民衆/開戦へ/戦争の実相/終戦から戦後へ)、第4章 台湾征服戦争(過酷な征服/「外地」の誕生/膨張の逆流)、第5章 日清戦後と国民統合(「戦後経営」の出発/近代法体系/「戦後経営」の政治/国民統合の進展)、第6章 民友社と平民社(戦争と底辺/文学と社会/ジャーナリズムの成熟)、第7章 日露戦争と韓国併合(押し開けられた扉/日露戦争/講和への動き/戦争の記憶/韓国併合へ)、おわりに――「輝かしい明治」論とナショナリズム。
 著者の原田敬一(1948年-)さんは日本近代史専攻の佛教大学文学部教授とのことです。  この巻は1890年の帝国議会開設から1910年の韓国併合までが対象です。
 著者は、この時期を「戦後が戦前だった時代」と呼び、「日本が日清戦争・北清事変・日露戦争とほぼ5年ごとに大きな戦争を繰り返して、台湾と朝鮮を獲得し、植民地支配に乗り出すという20年間」ととらえているとのことです。
 著者にとって、明治政権とは、人民を戦争に駆り立て、台湾、韓国を苦しめたうえで併合し、西洋列強が中国分割にいたる道を率先して拓いた悪辣政府といったとこでしょうか。
 明治政府は、西洋列強による植民地化の危機を跳ね返し、アジアで初めて近代的な議会を開設し、西洋列強に伍するに至ったアジアのフロンティアであるといったこととは対極の歴史観ですね。
 同じ歴史的事象から、歴史観によって、これほど隔たってしまうんですね。
 ある意味では痛快な著作とも言えないことはありません。最近の保守色を強める風潮に対してのアンチテーゼとして・・・・。
 でも、歴史家としてはまったく駄目ですね。
 負の歴史的事実を極大化することだけに主眼がおかれていて、歴史的意義や制約条件は全て無視しているような態度です。これで歴史家と言えるんでしょうか。
 こんなんでは、歴史的成果を高らかに唱えて、負の遺産はだんまりの保守政治家やその取り巻き評論家と同じ土俵に上がっているようなもんです。たんなる水掛け論で終わってしまうような主張です。戦後、左翼が主張し続け、ソ連崩壊とともに鳴りを潜めたレベルを超えていません。
 歴史家として、政治的立場を超えた、冷徹な著作であってほしかったです。

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by daisenhougen | 2007-03-22 07:13 | 読書-詩歌小説評論他
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