加藤陽子「満州事変から日中戦争へ(シリーズ日本近現代史5)」を読んだ。
岩波書店(岩波新書)、2007年06月20日1刷、819円、新書版、267頁。 目次を写しておきます。はじめに、第1章 満州事変の四つの特質(相手の不在、政治と軍人、事変のかたち、膨張する満蒙概念)、第2章 特殊権益をめぐる攻防(列国は承認していたのか、アメリカ外交のめざしたもの、新四国借款団、不戦条約と自衛権)、第3章 突破された三つの前提(二つの体制、張作霖の時代の終わり、国防論の地平)、第4章 国際連盟脱退まで(直接交渉か連盟提訴か、ジュネーブで、焦土外交の裏面)、第5章 日中戦争へ(外交戦、二つの事件、宣戦布告なき戦争)、おわりに、あとがき、参考文献、略年表、索引。 著者の加藤陽子(1960-)さんは、日本近代史専攻で東京大学准教授とのことです。 満州事変から日中戦争といったここから続く泥沼の戦争への端緒を扱っています。今回はこのシリーズの特徴とも言えるいわゆる「民衆」側からの視点ではなく、世界情勢をふまえた上での外交と軍事の側面から時代を描いています。そういった意味で、いままでのこのシリーズとはかなり視点の置き方が違いますね。 日中双方の認識のずれが徐々に拡大し、ついには宣戦布告なく開戦、そして常に講和を指向しながらかえって戦線が拡大する様が細やかに描き出されています。変に民衆側に立つといった視点を排除した分、かえって時代が鮮明に見えてきますね。 いままで刊行されたこのシリーズの中では一番いい出来ではないでしょうか。
by daisenhougen
| 2007-07-06 06:34
| 読書-詩歌小説評論他
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