谷川俊太郎「詩集 私」を読んだ。
思潮社、2007年11月30日、1,575円、A5版、130頁。 今年の読書始めは谷川さんの詩集からスタートです。 2002年から2007年にかけて「現代詩手帳」や「ちくま」などに発表された詩29編が収録されています。「シャガールと木の葉」(集英社)以来の新詩集ですね。 私は背の低い禿頭の老人です もう半世紀以上のあいだ 名詞や動詞や助詞や形容詞や疑問符など 言葉どもにもまれながら暮らしてきましたから (中略) 私の書く言葉には値段がつくことがあります(私 自己紹介) といった詩人が、ことばをめぐる考察を続けた詩集です。そして、 書き忘れていることがある と思う 多分綿埃のようなこと いや 何百万光年のかなたの星雲のようなこと 書き忘れていることがある 手紙に? 日記に? それとも詩に? (中略) 彼に話しかければ思い出すのだろうか 近寄って抱擁すれば 目をじっとのぞきこめば 罵れば 殴れば 刺せば それとも 書き忘れていることなどどこにもないのか たとえ思い出したとしても(《夢の引用》の引用) 一生をかけて、いくらことばをめぐって書き続けても、書ききれない思いでしょうか。そして 蛙が子どもを見上げている 象が子どもに寄り添っている 花々はまだ蕾 世界は静けさのうちに告げている 子どもの内心にひそむ謎を 子どもが座っている 私たち老いてゆく者のために かすかに微笑んで 詩人は子どもと一体になる。全ては子どもたちに託すといった谷川さんの晩年の心境がうつくしいことばで綴られています。 新年の読書始めから、すばらしいことばの饗宴を味わうことができました。
by daisenhougen
| 2008-01-02 17:03
| 読書-詩歌小説評論他
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