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「図録 池田満寿夫 知られざる全貌」を読む

d0001004_14192614.jpg 最初に奥さんの佐藤陽子「池田満寿夫について」が割と率直に思い出話を語ってます。林屋晴三「破格の造形・般若心経」では陶芸家としての再評価の為の論文でしょうね。
 図版はところどころに解説も付いてました。今回の図録では図版の差し替えが二枚も入ってました。類似作が多いから難しいんでしょうかね。、
 巻末には井端理英子・中尾美穂「池田満寿夫の足跡・歴史」、荒井一章「池田満寿夫との交遊」、太田治孝「池田満寿夫増穂登り窯」、堀元彰「池田満寿夫の現在・過去、未来」、浜田重幸「池田満寿夫の線描と墨」とそれぞれ関係者により池田満寿夫という多才な才能をいろんな側面からスポットを当てています。
 版画が印刷技術とコンピューターグラフィックスの飛躍的な発達で、美術シーンで最先端ではいられなくなったとの指摘は興味深いですね。
 でもつくづく器用な人だったんですね。油絵から版画、陶芸、書、イラストとなど美術上のどんな技法でもサマになる作品になってます。その上、小説では芥川賞を取っちゃうし、映画までものにするんですからね。
 あまりに器用にこなしすぎたので、池田満寿夫作品の本質が見えにくくなっているのかもしれません。
 時流に乗って華やかな世界に出てしまいましたし、その世界を器用に泳いでいったのは本人の才覚かもしれません。
 でも本質的にはナイーブで繊細な作品世界ですね。けっしてピカソのように美術史を書き換えていくような力業の芸術家ではないような気がします。
 特定の熱烈なファンが偏愛するマイナーな資質だった気がします。もちろんわたしも嫌いじゃありません。
 年譜、参考文献はかなり詳しい作りで充実しています。ゆっくる年譜を読んでいると、マルチタレントとしてテレビに出ていた頃が思い出します。4回も結婚してるなんては初めて知りましたが、ここだけはピカソばりですね。
 最後に池田満寿夫さんの作品が常設展示されている美術館も紹介されています。長野の「池田満寿夫美術館」以外にも熱海の「創作の家」と「池田満寿夫記念館」、三重の「パラミタミュージアム」と四カ所もあるんですね。
 いずれにせよ充実した図録です。今回の展覧会とともに池田満寿夫を冷静に見つめ直す切っ掛けになりますね。

 発行:毎日新聞社、制作:ニューカラー写真印刷、304頁。

by daisenhougen | 2008-03-19 07:22 | 読書-展覧会図録
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