「図録 東山魁夷展」を読む

d0001004_6481828.jpg 「図録 東山魁夷展」を読んだ。
 収録論文は3本で全て学芸員の執筆です。
 巻頭の尾崎正明「東山魁夷について」では魁夷の画風確立までを論じていますが、西洋絵画の影響下にありながら様々に試行錯誤し、表現が揺れ動いたことを論じています。魁夷がけっして一直線に表現を確立したわけでないことがよく解ります。
 「東山の風景画は、たんに自然の一画を切り取っただけのものではないし、必ずしもありのままの風景でもない。風景は東山の内面を通って濾過された上で、改めて二次元の世界に再構築されている」とは納得です。
 鶴見香織「東山魁夷のモノクローム絵画、水墨画」は目から鱗でした。魁夷のモノクローム作品の大半は岩絵具だったんですね。結局は墨による作品は唐招提寺壁画の第二期に至ってはじめて試みられていて、このときも胡粉を下地を使っていたとのことです。完全に墨で描いていると思ってました。いままで一体何を見てきたんだと自分の眼の節穴さに呆れてしまいます。
 伊藤羊子「水に映すー東山魁夷の倒影をめぐって-」は魁夷の水面に映った作品を論じています。なんと水面に映った作品が本制作1260点中241作品もあるとは驚きです。
 いずれも力のこもった力作でした。
 図版にはところどころに力のこもった解説が付いていましたし、もちろん作品選定も素晴らしいですから、魁夷の全貌を収録した保存版たる価値のある図録でした。

 発行:日本経済新聞社、制作:コギト、2008年、258頁。

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by daisenhougen | 2008-04-30 06:47 | 読書-展覧会図録
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