大泰司紀之・本間浩昭「カラー版 知床・北方四島」を読む

d0001004_813817.jpg 大泰司紀之・本間浩昭「カラー版 知床・北方四島―流氷が育む自然遺産」を読んだ。
 夏の休暇に知床に行ってみようと思ってます。そんな時はやっぱり知床といえば反応してしまいますね。カラー写真の美しい本が目に入ったので、思わず買ってしまいました。
 知床半島から北方四島にかけての素晴らしい自然の姿やそこに生息する動物や植物の姿などが綺麗な写真で紹介されています。
 さすがにカラー版をうたってるだけのことはありますね。
 鯨やラッコのダイナミックな写真を眺めるだけでも楽しい本です。

 でも、この本に書かれた内容も大変説得力のあるものでした。綺麗な写真付きの観光案内本ではありません。
 豊富な知識と知見に裏打ちされた、地球環境を考える切っ掛けを与えてくれる本でした。しかも大上段に構えるのでなく、具体的にオホーツクの海から考えている姿勢が素晴らしいです。
 かつて世界中のよってたかった乱獲によって絶滅寸前になったラッコが、ソ連占領によって開発から取り残されたおかげで、絶滅を免れただけでなく、近年ようやく1万頭にまで快復してきた。ところが喜んでいるのもつかの間、ロシアの資本主義化によって天然資源の再開発と水産資源の乱獲が始まりつつあるとこのとです。再び絶滅の危機をむかえる可能性もあるんだそうです。
 それを防ぐ為に、著者は次のような貴重な提言をしています。
 「知床の世界自然遺産の範囲をウルップ島まで拡張するという提案です。拡張によって、日本とロシアが責任を分かち合い、生態系を保全するとともに、北方四島周辺での漁業を持続可能に形に変えていくことができるのではないか」ということです。
 単なる自然保護だけでなく、漁業との両立まで見据えた素晴らしい提言だと思います。
 
著者の大泰司紀之(1940-)さんは獣医学専攻の北海道大学名誉教授で、本間浩昭さんは毎日新聞の記者とのことです。
 目次:はじめに、第1章 流氷が育む生態系(北の海の動物たち、シャチを閉じ込めた流氷、南半球の海鳥をも養う豊饒の海、流氷が運ぶ動物たち)、第2章 海と陸との意外なつながり(サケ、ヒグマ、植物の“三角関係”、エゾシカの激増と生態系の変貌、世界一高密度なシマフクロウ)、 第3章 地球に残された「最後の秘境」(ラッコの楽園、シャチとクジラたちの海、繁栄する海鳥たち、人間を恐れないアザラシ、トドの興亡)、第4章 生態系に迫る脅威(海峡を渡るタンチョウ、“国境”の密漁者たち、海鳥と海獣類にも及ぶ密漁の影響、国後島の金鉱開発、サハリン沖で油が流出すると…)、終 章 自然遺産を守るために(世界遺産「知床」の拡張構想、「監視療法」としてのエコツアー、持続可能な漁業)、おわりに。
 岩波書店(岩波新書)、2008年5月20日第1刷、1,050円、新書版、196頁。

[PR]
by daisenhougen | 2008-07-28 07:00 | 読書-詩歌小説評論他
<< 園田茂人「不平等国家 中国」を読む 「4人が創る「わたしの美術館」... >>