藤原新也「日本浄土」を読んだ。
雑誌「COYOTE」の連載「日本浄土」を中心に他の掲載を加えた、藤原さん得意の旅の写真とエッセーを組み合わせた著作です。 亡くなった初恋の人に触発された旅から始まり、亡くなった叔母にゆかりの地への旅、亡くなった友人の故郷への旅など、藤原さんの周辺で起きた死の影が色濃く反映された旅の記録です。 藤原さんの心境は次のような文章が象徴しているようです。 あの人間のにぎわいはどこに行ってしまったんだろう。 ふとそう思ったのだ。 最初に母が死に、父が死に、兄が死に、親戚の隼人兄ちゃんも死に、風のたよりにあの美人の仲居さんも死んだことも知ったし、あたかも満開の桜の花が一気に散るように、人間ってやつは儚い。 私は時おり私自身の存在がどこかに消え入るようなそんな無名の旅をしたいという欲求に駆られるのだ。 前著の「名前のない花」でも書きましたが(その時の感想はこちら)、最近の藤原さんは回顧的な文章が多いですね。近親者や近しい人が亡くなることが続く歳になったということでしょうか。 目次:島原(口紅)、天草(海とまねき猫)、門司港(夕立)、柳井(のどぼとけ、柳井)、祝島(祝島に心を捨てる、祝島)、尾道(雲煙過眼、尾道)、能登(サザンカの海、能登、金沢、神島)、房総(サクラの歌を聴けば)。 東京書籍、2008年08月05日第1刷、1,785円、四六版、238頁。
by daisenhougen
| 2008-08-05 07:00
| 読書-詩歌小説評論他
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