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片岡義男「ナポリへの道」を読む

片岡義男「ナポリへの道」を読む_d0001004_13374441.jpg 片岡義男「ナポリへの道」を読んだ。
 片岡さんの著作といえば、「自分と自分以外~戦後60年と今」を読んで感銘を受けて以来、特に熱心ではないですが、注目している存在ではあります。
 今回はスパゲッティにまつわる蘊蓄集です。食べ物に関する蘊蓄集では「白いプラスティックのフォーク」がありましたが(感想はこちら)、今度はテーマをぐっと絞っていますね。
 ただ読後感としては、なんとも奇妙な印象しか残りません。
 ナポリタンが戦後の占領期に誕生したといったことから、戦後の変遷をいろんな著作から取り出して入るんですが、それ自体特色のある話ではありません。
 数冊のネタ本に尽きてしまうような情報量ですね、
 ナポリタンを論ずるだけなら、もっと徹底して来歴を調べ尽くして欲しかったですね。
 かなり中途半端です。
 又、片岡さんのナポリタン体験も語られていますが、極めて淡い関係にしか思えません。
 片岡さんにとって戦後一貫して偏愛し続けた対象でもなさそうですね。
 それがなぜ、一書をものにする必然性があったのでしょう。
 結局、このナポリタンなる食物を取り上げたのは、江戸期の食文化にもつながる戦後の食べ物の象徴的存在であるとする、片岡さんの単なる思いつき過ぎないようにしか思えませんでした。
 次の一書に期待ですね。

 目次:1章 いかなる理由でナポリタンなのか、2章 元帥とイタリア風のスパゲッティ、3章 小麦をどう食べるか、4章 かあちゃん、腹へったよう、5章 デュラム、セモリナ、アル・デンテ、6章 なんでも好きなものを食べたまえ、7章 御八つ、お三時、三時ですよ、8章 ケチャップの瓶を逆さに立てる、9章 ナポリタンをシェアしたくない昭和の子供、10章 沈んでいく日本、浮かび上がるナポリタン、11章 ナポリタンのウィンドー・サンプルを探す旅、12章 トマトが僕を追いかける、13章 ナポリタンのある街、14章 トマトにおけるファンタジーという日常、あとがき。
 東京書籍、2008年09月01日第1刷、1,365円、四六版、157頁。

by daisenhougen | 2008-09-20 06:37 | 読書-詩歌小説評論他
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