由井大三郎「好戦の共和国アメリカ」を読む

d0001004_5595018.jpg 由井大三郎「好戦の共和国アメリカ」を読んだ。
 「アメリカはなぜ好戦的なのか、デモクラシーの先駆者を自負するのに・・・」といった問いから、この著作は説き起こされています。
 そして「「アメリカ民主主義」と好戦性との関係は極めて両義的である。一方で、「デモクラシーの先駆者」という自負が民主主義を「輸出」する戦争を肯定し、「好戦性」を生み出す面が確かにある。しかし、他方で、民主主義は意見の対立や紛争を「平和的」に処理しようとする政治思想であり、極力、戦争を抑制しようとする「非戦」の傾向を生み出す面もある。そこで、本書では植民地時代から現在に至る長いアメリカ史の流れの中で、この「好戦性」と「非戦性」の相克の関係をたどることによって、アメリカの国民文化と「好戦性」の関係を通史的に検討する」といったことが目指されています。
 そしてこの意図は見事に実現されているようです。
 まさしく植民地戦争から対テロ戦争までの400年の戦争続きのアメリカの歴史がみごとに描ききっています。
 新書版の制約の中にもかかわらず、めいっぱいの情報量を詰め込んでいて、それでいてしっかりと論旨が通っています。見事なもんです。
 そして最後には大統領候補のオバマとマケインの戦争観を卓越した歴史的見識に基づいて考察しています。サービスも満点の著作です。
 いたれりつくせりの、近年、出色のアメリカ論だと思います。

 油井大三郎(1945-)さんはアメリカ現代史・世界現代史専攻で東京大学名誉教授。
 目次:第1章 独立への道?植民地戦争と独立戦争、第2章 対欧「孤立」と大陸内「膨張」?第二次米英戦争とアメリカ・メキシコ戦争、第3章 内戦の悲劇と海洋帝国化?南北戦争と米西戦争、第4章 新世界秩序の構築?二つの世界大戦、第5章 「パクス・アメリカーナ」と局地戦争?朝鮮戦争とベトナム戦争、第6章 ポスト冷戦下の民族・宗教紛争とアメリカ?湾岸戦争と対テロ戦争。
 岩波書店(岩波新書)、2008年09月19日第1刷、819円、新書版、268頁。

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by daisenhougen | 2008-10-12 06:00 | 読書-詩歌小説評論他
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