福岡伸一「できそこないの男たち」を読んだ。
福岡さんといえば、前著「生物と無生物のあいだ」が無類に面白い科学読み物でしたね(その時の感想はこちら)。その面白さから「プリオン説はほんとうか?」なんて著作まで読んでしまいました(その時の感想はこちら)。 その福岡さんの新著ということですので、さっそく読んでみました。 生物は発生した時は単一性であった。そしてその性はメスであった。「メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない」ということだそうです。 まぁ、「生命の基本仕様、それは女である」なんて、読者を惹きつけるキャッチコピーとしては巧いもんですね。 そして本題のオスとするSPY遺伝子の発見レースをスリリングに記述していきます。分子科学者の発見レースの裏側の面白さに引きこまれて、一気に読み終えることができます。 すばらしい文章力ですね。 いっそのこと、学者さんなんてやってないで、科学をテーマとした小説家にでもなった方が成功しそうですね。 遺伝子をめぐる微妙な問題をかなりスッパリと論じていますが、論拠も示されていないので、本当かなぁといった疑問はかなり残ります。 でも、気軽な科学読み物と考えれば、目くじら立ててはいけないのかもしれません。 目次:第1章 見えないものを見た男、第2章 男の秘密を覗いた女、第3章 匂いのない匂い、第4章 誤認逮捕、第5章 SRY遺伝子、第6章 ミュラー博士とウォルフ博士、第7章 アリマキ的人生、第8章 弱きもの、汝の名は男なり、第9章 Yの旅路、第10章 ハーバードの星、第11章 余剰の起源。 光文社(光文社新書)、2008年10月、861円、新書版、285頁。
by daisenhougen
| 2008-10-28 06:48
| 読書-詩歌小説評論他
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