吉本隆明「「芸術言語論」への覚え書き」を読んだ。
吉本さんの新作単行本としては「日本語のゆくえ」以来です(その時の感想はこちら)。今回の書名も前著の元になった「芸術言語論」からもってきているようです。 第一部は未発表原稿、第二部はここ一年から二年に雑誌などに発表された単行本未収録の作品を集めて一冊にしたという作りです。 どちらかというと、最近の文章を手当たり次第に収録しましたといった感じで、まとまりのない感じが残りました。 まぁ、吉本さんの健在ぶりがわかる文章が読めただけでもありがたいですがね。 わたし的には、巻末の猫に関するエッセーがよかったです。吉本さんはエッセーシストとしても一流ですね 最後に、心に浸みる隆明節を引用しておきます。 「言葉はコミュニケーションの手段や機能ではない。それは枝葉の問題であって、根幹は沈黙だよ、と。 沈黙とは、内心の言葉を主体とし、自己が自己と問答することです。自分が心の中で自分に言葉を発し、問いかけることが、まず根底にあるんです。(中略) 本質は沈黙にあるということ、そのことを徹底的に考えること。僕が若い人に言えるとしたら、それしかありません」(『蟹工船』と新貧困社会)。 目次:第一部 神話と歌謡(未発表原稿)(神話伝承と古謡、歌集『おほうなはら』について、歌集『おほうなはら』について(二)、歌集『おほうなはら』について(三)、人生についての断想)、第二部 情況との対話(単行本未収録原稿)(詞人と詩人、清岡卓行を悼む、漱石の巨きさ、岡井隆の近業について―『家常茶飯』を読む、『死霊』の創作メモを読んで、小川国男さんを悼む、垣間見えた鮮やかなロシアの大地、深い共感が導き出した稀有な記録、家訓の重圧に耐えられるか、靖国論争にとらわれては日本は変わらない、いじめ自殺 あえて親の問う、「二大政党制」で凡庸な政治家に九条改正されたらかなわない、『蟹工船』と新貧困社会、長老猫の黒ちゃんへ、大きい猫と小さい子供の話)。 李白社、2008年11月17日初版、1,785円、四六版、250頁。
by daisenhougen
| 2008-11-20 07:30
| 読書-詩歌小説評論他
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