浜矩子「グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに―」を読んだ。
ウォール街発の今回の金融暴走については、昨年に神谷秀樹さんの「強欲資本主義ウォール街の自爆」を読んで、大枠の流れについては把握できていました(その時の感想はこちら)。 神谷さんはバンカーとしての実務家の立場からでしたが、本著は学者として今回の金融危機を解明しようとの試みのようです。 表題にもあるように、今回の事態を単なる金融危機ではなく、更には1929年の恐慌とも違う「21世紀型のグローバル恐慌」と捉えています。 モノとカネが分離して、カネだけが自己増殖し、暴走し、誰も制御できなくなったまさに「今」をスリリングに描いてくれています。 更に歴史的な位置づけや地域的な広がりについてもバランス良く目配りして記述してくれてます。 通貨管理体制下で金融のグローバル化が進行した「今」だからこそ発生した「21世紀型のグローバル恐慌」を解りやすく記述してくれています。 新聞や雑誌、TV等で散々取り上げている問題をスッキリまとめてくれましたといったとこですね。 ただ、少々文句を言わせてもらえば、経済学者って、こういった事態が発生した当時にはなぜ何にもいわないんでしょう。 深刻化した今になって、いくら素晴らしく分析しても、後講釈の感は否めません さらに、この事態に対する処方箋としては何も言っていないに等しいのも残念です。 でも、まぁ、無い物ねだりを言っても仕方ありません。 今起こって経済危機を多角的に教えてくれる教科書としては素晴らしいんですから、それで満足することにしましょう。 著者の浜矩子(1952-)さんはマクロ経済分析が専門で同志社大学教授とのことです。 目次:はじめに―恐れ慌てる世界、第1章 何がどうしてこうなった(地獄の扉が開いた日、事の起こり―証券化という名の錬金術、グローバル・バブルの背景)、第2章 なぜ我々はここにいるのか(原点はニクソン・ショックにあった、金利自由化から金融証券化へ、金融が地球を一人歩きする時)、第3章 地球大の集中治療室(迷走するアメリカ、足並み乱れる欧州、擬似体験者、日本のお粗末)、第4章 恐慌を考える(恐慌とは何か、歴史が語ること、21世紀型グローバル恐慌とは)、第5章 そして、今を考える(金融サミットの残された課題、グローバル恐慌、モノの世界に及ぶ、ひきこもる地球経済)、おわりに―金融暴走時代の向こう側。 岩波書店(岩波新書)、2009年01月20日第1刷、735円、新書判、224頁。
by daisenhougen
| 2009-02-02 07:26
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