福岡伸一「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」を読む

d0001004_10385848.jpg 福岡伸一「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」を読んだ。
 福岡伸一さんの科学エッセィは毎回楽しませてもらっています。前作の「できそこないの男たち」以来の新刊ですからさっそく一読してみました(前作の感想はこちら)。
 まずキーワードとなっている「動的平衡」ですが以下のようなことのようです。 
 生命を分子レベルでとらえると、「生体を構成している分子は、すべて高速で分解され、食物として摂取した分子と置き換えられている。身体のあらゆる組織や細胞の中身はこうして常に作り変えられ、更新され続けているのである。だから、私たちの身体は分子的な実体としては、数ヶ月前との自分とはまったく別物となっている。(中略)つまり、そこにあるものは、流れそのものでしかない。その流れの中で、私たちの身体は変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っている。その流れ自体が「生きている」ということなのである。シェーンハイマーは、この生命の特異的ありように「動的な平衡」というすてきな名前をつけた。ここで私たちは改めて「生命とは何か?」という問いに答えることができる。「生命とは動的な平衡状態にあるシステムである」という回答である。」
 こういった生命観に基づき、コラーゲン食品のインチキさを斬り、ダイエットの方法を伝授し、食品問題まで論じています。
 さらには遺伝子組み換え技術やES細胞などの不可能性にまで達しています。
 分子生物学の知見を素人にもわかりやすく伝えてくれています。
 毎度のごとく、科学啓蒙書としては抜群のできばえの著作でした。

 目次:「青い薔薇」―はしがきにかえて、プロローグ 生命現象とは何か、第1章 脳にかけられた「バイアス」―人はなぜ「錯誤」するか、第2章 汝とは「汝の食べた物」である―「消化」とは情報の解体、第3章 ダイエットの科学―分子生物学が示す「太らない食べ方」、第4章 その食品を食べますか?―部分しか見ない者たちの危険、第5章 生命は時計仕掛けか?―ES細胞の不思議、第6章 ヒトと病原体の戦い―イタチごっこは終わらない、第7章 ミトコンドリア・ミステリー―母系だけで継承されるエネルギー産出の源、第8章 生命は分子の「淀み」―シェーンハイマーは何を示唆したか、あとがき。
 木楽舎、2009年02月25日第1刷、1,600円、四六版、254頁。

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by daisenhougen | 2009-04-23 07:38 | 読書-詩歌小説評論他
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