2008年 12月 29日 ( 1 )

塩川伸明「民族とネイション-ナショナリズムという難問」を読む

d0001004_813334.jpg 塩川伸明「民族とネイション-ナショナリズムという難問」を読んだ。
 国際問題の二大難問といえば宗教とナショナリズムではないでしょうか。そのナショナリズムについて中立的に問題整理してくれる著作です。
 最初に概念と用語法の整理ということでエスニシティ、民族、国民、あるいはネイションといった言葉に意味と揺らぎあるいは翻訳の問題まで整理してくれてます。
 その後、歴史的に即しながら地域ごとのナショナリズムの諸相を概観しています。
 あくまで実際の個々の実態を描き、抽象的に陥ることを注意深く避けようとしています。こいった微妙な問題はこういった姿勢は大事かもしれません。
 著者の立場はあくまでもナショナリズムを難問としてとらえることであって、その解決策を安易に求めることではないようです。
 ナショナリズムについて考える際の基礎知識を得ることができる好著だと思います。 
 著者の塩川伸明(1948-)さんはロシア現代史専攻で東京大学教授。       
 目次:はじめに、第1章 概念と用語法―一つの整理の試み(エスニシティ・民族・国民、さまざまな「ネイション」観―「民族」と「国民」、ナショナリズム、「民族問題」の捉え方)、第2章 「国民国家」の登場(ヨーロッパ―原型の誕生、帝国の再編と諸民族、新大陸―新しいネイションの形、東アジア―西洋の衝撃の中で)、第3章 民族自決論とその帰結―世界戦争の衝撃の中で(ナショナリズムの世界的広がり、戦間期の中東欧、実験国家ソ連、植民地の独立―第二次世界大戦後(1)、「自立型」社会主義の模索―第二次世界大戦後(2))、第4章 冷戦後の世界(新たな問題状況―グローバル化・ボーダレス化の中で、再度の民族自決、歴史問題の再燃)、第5章 難問としてのナショナリズム(評価の微妙さ、シヴィック・ナショナリズム?、ナショナリズムを飼いならせるか)、あとがき、読書案内。
 岩波書店(岩波新書)、2008年11月20日第1刷、777円、新書版、236頁。

[PR]
by daisenhougen | 2008-12-29 08:12 | 読書-詩歌小説評論他