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加藤徹「西太后」を読む

 加藤徹「西太后 大清帝国最後の光芒」(中公新書)を読んだ。
 清朝末期の権力者「西太后」(1835-1908)を、彼女の生きた清朝末期の時代を描きながら、生涯の真実を浮き彫りにして、再評価しようとした試みのようです。
 まず著者は「現代中国の原点である西太后の時代」といった視点から、清朝末期を生き生きと描き出しています。そして中国共産党の現在の国家政策(領土の確定等々)の原点をこの時代に求めています。結構説得力のある議論ですね。
 又、最新の発掘されつつある歴史的事実に基づき、西太后の生涯を丁寧に描いています。そして「西太后は人民の敵だ」という中国共産党史観に呪縛されていることから、西太后の再評価を試みています。非常におもしろいですね。
 小生の全く知らない分野でありますが、いろんな知識を得ることが出来ました。長距離電車の友にはもってこいでした。

by daisenhougen | 2005-10-18 09:15 | 読書-詩歌小説評論他

オペラ「アイーダ」プラハ国立歌劇場/マリア・グレギーナを聴く

d0001004_839294.jpg 昨日(10月16日)「東京文化会館」でヴェルディ作曲のオペラ「アイーダ」を聴いた。
 演奏はジョルジョ・クローチ指揮プラハ国立歌劇場管弦楽団、プラハ国立歌劇場合唱団、プラハ国立歌劇場バレエ団、演出:ペタル・セレム。
 配役はアイーダ:マリア・グレギーナ、ラダメス:ヤネス・ロトリッチ、アムネリス:ガリア・イブラギモヴァー、アモナズロ:マルティン・バールタ。
 今回の席は3階L3列の舞台寄りでした。先日の文化会館のオペラ鑑賞の時は小泉さんに遭遇しましたが、今回は地震に遭遇しました。震度3でしたので中断しないで続行しましたが、このあたりの耐震対策はどうなんでしょうね。
 さて演奏ですが、今回は東欧の演奏団体なのでヒドイ演奏に出くわさないことを祈ってましたが、結果としては結構満足できる演奏でした。
アイーダ役のグレギーナはさすがに貫禄の歌いっぷりでした。かなりの声量ですね。圧倒的な存在感を示していました。タイトルロールを歌うだけのことはありますね。アムネリス役のイブラギモヴァは初めて拝見する歌い手さんですが、すばらしいと思いました。非常に鋭い声質に魅了されました。声量もグレギーナに負けていませんし、声質も良いですね。今後注目しておく価値有りですね。でも、この二人にはさまれたラダメス役のロトリッチは声量ほか少々見劣りしました。強い女性陣にはさまれて、影の薄い存在でしたね。 オーケストラ陣も結構健闘していました。特に目立つ演奏ではないんですが、歌唱陣をしっかり支えていました。伝統的な歌劇場の演奏としてはこれでも良いのかもしれません。 演出は何の特徴もないようですね。少し時代遅れとなったグランドオペラ形式をもう少し工夫して提示してほしい気もしましたが、無い物ねだりかも知れません。舞台装置は日本全国を巡回する為もあるのでしょうか、極めてシンプルでした。こちらも、もう少し工夫して欲しかったですね。

by daisenhougen | 2005-10-17 08:39 | 鑑賞記-コンサート

加島祥造「肝―老子と私」を読む

 加島祥造「肝―老子と私」(日本教文社)を読んだ。
 加島さんの著作は今年初めに読んだ「タオと谷の思索」以来です。加島さんの老子(タオ)を論じた著作に惹かれて、結構追っかけて読んできました。
 今回は最初は加島さんの手術の体験から「肝」といった言葉を思いつき、そこから説き起こしています。次には彼の専門のD・H・ロレンスなどの西洋思想を引用しながら関連を展開します。このあたりは英文学者の面目躍如ですね。でも最終的にはおなじみの老子(タオ)論に行き着いています。加島さんの老子(タオ)論の理論編かもしれませんね。
 でも加島さん翻訳の老子は本当に良いですね。心にすーっと入ってきます。もう一度通して読み返したい気持ちになりました。今度、自宅へ戻ったら持ってこなくては。

by daisenhougen | 2005-10-16 08:36 | 読書-詩歌小説評論他

「巨匠デ・キリコ展」を見る

d0001004_923555.jpg 昨日(10月14日)「大丸ミュージアム」で 「巨匠デ・キリコ展」を見た。
 この展覧会はデ・キリコ夫人イザベラのコレクションを管理するジョルジョ・イーザ・デ・キリコ財団のコレクションから110余点の展示とのことです。
 初めてデ・キリコ(1888-1978年)の作品をまとめて見ることができるので、期待して出かけました。
 最初の方は、こんなに大量にデ・キリコの作品が並んでいると喜んで見ていました。でも段々とその単調さが気になりだしました。そしてその理由は今回の展示作品はほとんどが晩年の作品ばかりにあることなんですね。デ・キリコの全盛期の作品はほとんど展示されていません。デ・キリコの全貌を知ることができる展覧会ではありません。もちろん主催者もそういった狙いで開催してはいません。そういった意味ではデ・キリコをじゅうぶん知っている人向けのハードルの高い展覧会なのかも知れませんね。
 晩年の作品群は少し自己模倣的な要素が出ているようですし、作品自体の完成度も短期間にかなり大量に製作された作品群からなのでしょうか、少々見劣りするものもあります。巨匠デ・キリコの長年の画業をふまえた上で、彼の傑作群を想像しながら見るべき作品群かも知れません。

by daisenhougen | 2005-10-15 09:02 | 鑑賞記-展覧会

「谷川俊太郎詩選集3」を読む

 「谷川俊太郎詩選集3」(集英社文庫)を読んだ。
 谷川俊太郎の全詩篇から選んだ選集の最終巻。今回は1988年から最新の2005年までの次の詩集から選ばれている。
「メランコリーの川下り」(思潮社)1988.12、「魂のいちばんおいしいところ」(サンリオ)1990.12、「女に」(マガジンハウス)1991.3、「詩を贈ろうとすることは」(集英社)1991.5、「子どもの肖像」(紀伊國屋書店)1993.4、「世間知ラズ」(思潮社)1993.5、「ふじさんとおひさま」(童話社)1994.1、「モーツァルトを聴く人」(小学館)1995.1、「真っ白でいるよりも」(集英社)1995.5、「クレーの絵本」(講談社)1995.10、「やさしさは愛じゃない」(幻冬舎)1996.7、「みんな やわらかい」(大日本図書)1999.10、「クレーの天使」(講談社)2000.10、「minimal」(思潮社)2002.10、「夜のミッキーマウス」(新潮社)2003.9、「シャガールと木の葉」(集英社)2005.5、及び単行本未収録詩篇。
 巻末には谷川さんの書簡インタビューと著作目録が収録されています(凄い著作の数ですね。筆1本で生活するってこういう事なんですね)。
 これで谷川さんの50年以上にわたる作品を駆け足で辿ったことになります。青年期から一貫して詩作を続けて、常に第一線であり続けていることは驚異的ですね。年老いても衰えない瑞々しい感性は素晴らしいです。
 最後に詩作を中断した後、再開した詩集「minimal」から短い詩を引用しておきます。谷川さんが中断したのはこの時だけでしたね。もはや復帰はないと思ってましたが、見事に戻ってきましたね。

 夜明け前に
 詩が
 来た

 むさくるしい
 言葉を
 まとって

 恵むものは
 なにもない
 恵まれるだけ

 綻びから
 ちらっと見えた
 裸身を

 またしても
 私の繕う
 襤褸(襤褸)

by daisenhougen | 2005-10-14 08:55 | 読書-詩歌小説評論他

「図録 プラード美術館の至宝展」を読む

d0001004_852148.jpg 「図録 プラード美術館の至宝展‐フィレンツェに挑戦した都市の物語」(アートプランニング レイ)を読んだ。
 マリア・ピア・マンニーニ(プラート市立美術館長)「プラード市の至宝」は導入役としてプラード美術館の紹介を簡潔に語っています。
 小佐野重利「プラートの芸術文化-「中心」としてのフィレンツェから見た「周縁」性」は副題にあるようにフィレンツェとの対比からプラート美術を論じていて、参考になりました。
 クリスティーナ・ニョーニ・マヴァレッリ「プラート大聖堂のフィリッポ・リッピの壁画」は画像といっしょに壁画の魅力を紹介しています。
 金原由紀子「聖帯の伝説:解題」及び「聖帯の伝説(ガッレッティ版)」はプラートの宝である聖帯にかかわる伝説を理解させてもらいました。
 肝心のカタログ部分も詳細な作品の解題と解説が記載されており、実際に展示を見る時にはわからなかった事もいろいろ教わりました。
 読んでいると、イタリアのプラートに行って、プラート大聖堂のフィリッポ・リッピの壁画や他のリッピの絵画も見たくなってしまいますね。

by daisenhougen | 2005-10-13 08:52 | 読書-展覧会図録

「谷川俊太郎詩選集2」を読む

 「谷川俊太郎詩選集2」(集英社文庫)を読んだ。
 中国人の学者兼詩人の田原が谷川俊太郎の全詩篇から選び3分冊で刊行のうちの2冊目。1975年から1988年までの次の詩集から選ばれている。
 「定義」(思潮社)1975.9、「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」(青土社)1975.9、「誰もしらない」(国土社)1976.2、「由利の歌」(すばる書房)1977.8、「タラマイカ偽書残闕」(書肆山田)1978.9、「質問集」(書肆山田)1978.9、「そのほかに」(集英社)1979.11、「コカコーラ・レッスン」(思潮社)1980.10、「ことばあそびうた また」(福音館書店)1981.5、「わらべうた」(集英社)1981.10、「わらべうた 続」(集英社)1982.3、「みみをすます」(福音館書店)1982.6、「日々の地図」(集英社)1982.11、「どきん」(理論社)1983.2、「対詩」(書肆山田)1983.6、「スーパーマンその他大勢」(グラフィック社)1983.12、「手紙」(集英社)1984.1、「日本語のカタログ」(思潮社)1984.11、「詩めくり」(マドラ出版)1984.12、「よしなうた」(青土社)1985.5、「いちねんせい」(小学館)198.1、「はだか」(筑摩書房)1988.7。
 この時期の谷川さんの作品はほぼリアルタイムに読んできました。この時期はけっこう現代詩なるものを読んでいましたので、実際に買った詩集も収められていて懐かしいですね。
 この時期は谷川さんも日本現代詩の中心人物となり、いろんな方面で果敢に挑戦した時期ですね。この多様さには圧倒されてしまいます。
 巻末の高橋源一郎さんの解説は秀悦ですね。「日本人が知っている詩人といえば、谷川俊太郎ひとりだということを」との神託にも納得させられてしまいました。
 最後に短い詩を一編引用しておきます。

 いつか私はいつか
 どこかから来て
 不意にこの芝生の上に立っていた
 なすべきことはすべて
 私の細胞が記憶していた
 だから私は人間の形をし
 幸せについてさえ語りさえしたのだ(芝生)

by daisenhougen | 2005-10-12 08:44 | 読書-詩歌小説評論他

吉本隆明「13歳は二度あるか」を読む

 吉本隆明「13歳は二度あるか―「現在を生きる自分」を考える」(大和書房)を読んだ。
 吉本さんの思想を中学生向けに啓蒙的に語った本。第1章「新聞を読む、時代をつかむ」、第2章「社会と関わる、自分を生きる」、第3章「宗教とはなにか、法律や国家はどう成立したのか」、第4章「犯罪と死について、考えてみる」、第5章「戦争というもの、自分との距離」といった内容。
 最近の吉本さんはいかに平易に自分の思想を表現するかに腐心しているようだ。自分の思想を集大成して、若者に伝えたいという気持ちは理解できますし、それはそれで頑張ってもらいたいです。「教行信証」を書いた親鸞が「歎異抄」で根源的な言葉で自分の思想を語ったように、吉本さんにも啓蒙的で無いそういった著作を出してほしいですね。
 でも冒頭の発言が「中学生になったら新聞を読みましょう」というのにはビックリしました。吉本さんも優しくなりましたね。遙か昔のことですが、新聞の論説は信じちゃいけない、もっと根源的に考えろといった発言から吉本さんのファンになった一人として複雑な気持ちになります。もちろん吉本さんの意図は、世界の動きに目を向けろといったとこなんでしょうがね・・・・。
 時代に晒されている敏感な中学生だからこそ、平易で尚かつ根源的な言葉で吉本さんの思想を伝えて欲しいですね。

by daisenhougen | 2005-10-11 21:23 | 読書-詩歌小説評論他

「プラート美術の至宝展」を見る

d0001004_10195122.jpg 昨日(10月7日)「損保ジャパン」で「プラート美術の至宝展―フィレンツェに挑戦した都市の物語― 」を見た。
 「イタリアのトスカーナ地方フィレンツェから北西に約15km程はなれた小都市」のプラート。そのプラートは「市内の教会や政庁が中世以来の美術品で満たされている」。「この街から、14~18世紀の絵画と資料・約60点をご紹介」とのことです。
 素晴らしい展覧会に巡り会えました。5月に見たラ・トゥール展以来のオールドマスター作品の素晴らしい展覧会ですね。
 目玉のフィリッポ・リッピ(1406年頃-1469年)は初期ルネサンスの重要な画家でボッティチェッリの師匠とのことですが、小生初めて拝見しました。祭壇画「身につけた聖帯を使徒トマスに授ける聖母」は素晴らしい作品ですね。思わず見とれてしまいました。他には「聖ユリアヌスを伴う受胎告知」も素晴らしかったです。もっと多くの作品見たかったですね。イタリアに飛んでいってプラート大聖堂の壁画も見てみたい気持ちにさせられましたね。
 その他にも聖体伝説を描いた絵画他、多様な作品が展示されていました。いずれも無知な小生には知らない画家の作品ばかりですが、素晴らしい作品達ですね。圧倒されました。西洋美術の奥深さを感じさせてもらいました。
 最後に常設展示にゴッホの「ひまわり」が展示してありました。先日の「ビュッフェ展」の時は貸し出し中でしたが、やっぱりこの美術館の目玉ですので、ゆっくり拝見させてもらいました。やっぱり存在感は抜群ですね。
今回の展覧会の図録買いましたので、読んでからもう少し感想書く予定です。

by daisenhougen | 2005-10-08 10:18 | 鑑賞記-展覧会

「やなぎみわ展」を見る

d0001004_10165646.jpg 昨日(10月7日)「原美術館」で「やなぎみわ~無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語展」を見た。
 小生、やなぎみわ(1967-)さんの作品は今回初めて拝見します。少女の中に老婆が潜んでいる(あるいはその逆)といったテーマのようですね。
 モノクロ写真の「無題」と題された写真が4点と「寓話」シリーズから13点が展示されていました。
 これらの作品には心惹かれました。特に無題のシリーズは想像力を刺激されました。作者の心象風景が伝わってくる気がしましたね。寓話シリーズの方も表現としてはおもしろかったですね。モノクロ写真の中に女性性の中の老と幼、無垢と無慈悲の対比を様々なヴァリエーションで表現されていました。
 その他に映像作品が「砂少女」「fortunetelling」「砂女」の3編が上演されていました。
 こちらの方はテーマ全体を補強する役目で終わっていますね。表現として独立して存在するような作品とはなっていませんね。
 小生、今まで現代美術の展覧会で上映されている映像作品で衝撃を受けた経験がありません。これらの作品も商業映画の表現を超えることが出来ているとは思えませんでした。
 でも「やなぎみわ」ワールドに引き連れて行ってくれる良い展覧会でしたね。そういった意味では映像は役に立ってましたね。
 やなぎみわさんには今度は女性性以外のテーマにもチャレンジして欲しいですね。

by daisenhougen | 2005-10-08 10:15 | 鑑賞記-展覧会